仕事中のトイレ休憩を管理されるのは労働基準法違反? 弁護士が解説

2024年02月22日
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仕事中のトイレ休憩を管理されるのは労働基準法違反? 弁護士が解説

労働基準法では、一定時間勤務した場合には45分または60分の休憩を与えなければならないと定められています。

労働者としては、休憩時間に食事などを済ませることになりますが、トイレについては休憩時間以外にも行きたくなるという場合もあるでしょう。トイレ休憩の時間が労働時間に含まれるかどうかは、支払われる賃金にも影響するため、労働者にとっては重大な関心事であるでしょう。

本コラムでは、仕事中のトイレ休憩と労働基準法上の休憩時間との関係について、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。

1、労働時間における「休憩時間」の定義とは?

まず、労働基準法における「休憩時間」の定義や概要を解説しますい。

  1. (1)労働基準法上の休憩時間とは

    休憩時間とは「労働からの解放が完全に保障された時間」のことです。
    労働基準法では、労働時間に応じて、以下のように休憩時間を与えなければならないと定められています。

    • 労働時間が6時間以内……休憩時間は不要
    • 労働時間が6時間を超え8時間まで……休憩時間は少なくとも45分
    • 労働時間が8時間を超える……休憩時間は少なくとも1時間


    上記の休憩時間は、法律上要求される最低ラインであるため、それ以上の休憩時間を与えることは問題ありません。

  2. (2)休憩時間の基本原則

    労働基準法では、休憩時間に関して、以下の三つの基本的なルールが定められています。

    ① 自由利用の原則
    休憩時間は労働から完全に解放された時間であるため、その時間は労働者が自由に利用することが許されていなければいけません

    具体的には、労働者は休憩時間中には以下のような行為をすべて自由に行うことが認められています。

    • 食事をする
    • トイレに行く
    • タバコを吸う
    • 電話をかける
    • 読書する
    • スマホやタブレットで動画を視聴する
    • 外出する
    • 昼寝をする


    ② 途中付与の原則
    休憩時間は、労働時間の途中で与えなければなりません

    原則的に、労働時間の途中であればどのタイミングで与えても問題ありませんが、始業前や終業後に休憩時間を与えることは違法です。

    ③ 一斉付与の原則
    休憩時間は、労働者全員に一斉に与えなければなりません

    ただし、一斉付与することで業務に支障が生じるような場合には、労使協定を締結すれば、交代で休憩時間を与えることも可能です。

2、仕事中にトイレを行かせないのは労働基準法違反となる

休憩時間にトイレに行くことは「自由利用の原則」から当然に認められます。
では、休憩時間ではなく労働時間中にトイレに行くことは認められるのでしょうか?

  1. (1)仕事中のトイレを禁止することはパワハラになる可能性がある

    会社によっては、休憩時間以外のトイレ休憩を禁止している場合もあります。

    しかし、トイレに行きたくなるのは生理現象であり、労働者の意思では止められるようなものではありません。
    また、トイレに行きたいのに我慢をすることには、ぼうこう炎などの病気になるリスクも存在します。
    したがって、トイレ休憩を禁止する規則は公序良俗に反する違法なものであり、法的には無効となるのです。

    また、トイレ休憩を禁止することは、パワハラにあたる可能性もあります。
    もしトイレ休憩を禁止されたことが原因で身体的・精神的な損害を受けた場合には、損害賠償を請求することも検討しましょう。

  2. (2)トイレ休憩の頻度や長さによっては職務専念義務違反になる可能性もある

    労働者は「仕事中は業務に集中しなければならない義務」である「職務専念義務」を負っています。

    排尿や排便は生理現象であり、回数や一回あたりにかかる時間にも個人差があります。
    そのため、他の労働者よりもトイレ休憩の回数が多かったり一回あたりの時間が長かったりしたとしても、ただちに職務専念義務違反になるわけではありません。

    しかし、体調不良や病気でもないのに必要以上にトイレ休憩をとることや、トイレに長時間こもってスマホを操作したり読書したりすることは、職務専念義務違反にあたる可能性もあります
    職務専念義務違反となってしまった場合には、戒告やけん責処分、減給処分などの懲戒処分を受けるリスクもありますので注意が必要です。

3、仕事中のトイレ休憩により賃金や残業代を減らされたときの対応

以下では、仕事中のトイレ休憩を理由に賃金や残業代を減らされてしまった場合にとるべき対応を解説します。

  1. (1)トイレ休憩の時間は労働時間に含まれる

    労働基準法上の労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれた時間のことをいいます。
    そして、始業時間から就業時間までの拘束時間中の不活動時間が労働時間にあたるかどうかについては、労働から完全に解放されている時間といるかどうかによって判断されます。

    トイレ休憩の目的は排尿や排便などの用便を済ませることにあり、用便を済ませたらすぐに業務に戻ることが予定されています。
    したがって、トイレ休憩であっても完全に労働から解放されているとはいず、労働時間にあたると考えられます。
    ただし、トイレ休憩という名目で長時間スマホを操作していたような場合には、労働から解放された休憩時間と評価される可能性もある点に注意してください。

  2. (2)トイレ休憩を理由とする賃金や残業代の減額は違法

    トイレ休憩の時間も労働時間に含まれるということは、その時間に対しても賃金の支払いが必要になるということです。
    逆にいえば、トイレ休憩の時間に応じた賃金や残業代を減額するということは、違法な賃金控除となるのです。

    また、トイレ休憩の回数や一回あたりの時間が長い場合には、労働から解放された休憩時間にあたる可能性もありますが、生理現象であるトイレ休憩と精神的なリフレッシュのためのトイレ休憩を明確に区別することは難しく、運用面でも賃金控除は困難といます。

    そのため、会社からトイレ休憩を理由に賃金や残業代の減額をされてしまった方は、本来支払われるべき賃金が支払われていない可能性が高いでしょう。
    このような場合には、会社に対して未払い賃金を請求することができます。

4、仕事中のトイレが原因で解雇されることは許される?

以下では、仕事中のトイレが原因での解雇が不当解雇にあたるかどうかについて解説します。

  1. (1)トイレ休憩を理由とする解雇は不当解雇の可能性が高い

    トイレ休憩は生理現象としてやむを得ないものであるため、それを理由として解雇することは、不当解雇にあたる可能性が高いといます。

    会社側としては「他の労働者よりもトイレ休憩の頻度が多すぎる」「一回あたりのトイレ休憩の時間が長すぎる」などとして、解雇の正当性を主張してくるかもしれません。
    しかし、トイレ休憩の頻度や時間には個人差があって当たり前であるため、あまりにも常識を逸脱した頻度や時間でない限りは、解雇の正当性は認められません。

    そもそも、会社が労働者を解雇する際には、労働契約法が定める厳格なルールに基づき行われなければならず、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が解雇の要件となります。したがって、下のような例外的なケースを除き、トイレ休憩を理由とする解雇は不当解雇として争う余地があるといます。

    • トイレ休憩という名目で実際はスマホを操作している
    • 体調不良や病気でもないのに勤務時間の大部分をトイレで過ごしている
    • トイレ休憩の頻度や回数を何度も注意されているのに、一向に改善が見られない
  2. (2)不当解雇を争う場合には弁護士に相談を

    不当解雇である場合には、会社による解雇は無効となるため、職場への復帰を求めることができます。
    また、「解雇された職場に復帰するのは気まずい」という場合にも、解雇後の未払い賃金を請求することができます。

    会社に対してこのような対応を希望する場合には、まずは会社と交渉をしていく必要があります。
    しかし、労働者個人で会社と交渉をしたとしても、まともに取り合ってくれない可能性があります。
    そのような場合には、弁護士に交渉や手続きを依頼しましょう。

    弁護士であれば労働者に代わって会社との交渉を進めることができますので、会社としても適当な対応はできなくなります
    また、話し合いでの解決が難しいケースであっても、弁護士であれば労働審判や裁判などの法的手続きにより解決を図ることができます。
    不当解雇を争うためには、労働問題に関する豊富な知識と経験が不可欠となるため、まずは専門家である弁護士に相談するようにしましょう。

5、まとめ

労働基準法上の休憩時間は、労働から完全に解放されている時間をいいます。
そして、一般的なトイレ休憩は休憩時間ではなく労働時間にあたります。
したがって、原則として、トイレ休憩を理由に賃金控除などをするのは違法な扱いになるのです。
また、トイレ休憩は生理現象としてやむを得ない行動であるため、仕事中のトイレの制限や禁止は違法であり、強制された場合にはパワハラにあたる可能性もあります。

不当な理由に基づいて会社から賃金を減額されたり、解雇されたりした場合には、未払い賃金の請求や解雇無効を求めましょう。
会社との交渉や法的な対応には専門的な知識や経験も必要となってくるため、まずはベリーベスト法律事務所 奈良オフィスまでご連絡ください。

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