トラックの待機時間に給料は発生する? 労働時間に含まれるケース

2023年04月24日
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トラックの待機時間に給料は発生する? 労働時間に含まれるケース

2021年度に奈良県内の労働基準監督署が監督指導を行った343事業場のうち、違法な時間外労働があったとされる事業場は126事業場でした。

トラックドライバー(トラック運転手)は、運送開始を待つ待機時間(手待時間)が発生することがよくあります。

トラックドライバーの待機時間についても、労働時間に該当する場合は給料が発生します。適切に給料が支払われていない場合には、弁護士に相談の上、未払い給料(未払い残業代)の請求を検討しましょう。

今回はトラックドライバーの待機時間について、給料の発生有無や計算方法などをベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。

出典:「長時間労働が疑われる事業場に対する令和3年度の監督指導結果を公表します」(奈良労働局)

1、トラックドライバーの待機時間は、労働時間に含まれるのか?

トラックドライバーが運送開始を待っている待機時間は、最高裁の判例に照らして、給料が発生する「労働時間」に該当する可能性があります。

  1. (1)「労働時間」とは

    「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます(最高裁平成12年3月9日判決)。

    トラックドライバーの待機時間は、実際に運送を行っていなくても、使用者の運送開始指示を待っている時間と捉えられる場合があります。この場合は、使用者の指揮命令下に置かれているものとして、待機時間が労働時間に該当することになります。

  2. (2)待機時間が労働時間に含まれる可能性が高い場合の例

    待機時間が労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより、客観的に定まります。したがって、具体的な事情を検討した上で、待機時間が労働時間に該当するか否かを判断することが必要です。

    一例として、以下のような事情がある場合には、待機時間が労働時間に該当する可能性が高いと考えられます。

    (例)
    • 自由にトラックを離れることができない
    • 停車中の車両を監視する義務を課されている
    • 待機時間は休憩とされているものの、実際には使用者の指示を待つ必要があり、自由に利用することができない
    • 次の運送作業がいつ開始するかわからない
    など

2、待機時間の記録に関する法令上の取り扱い

不特定多数の荷主から運送の依頼を受け、トラックを用いて荷物を運送する事業は「一般貨物自動車運送事業」に当たります(貨物自動車運送事業法第2条第2項)。
また、単一特定の荷主から運送の依頼を受け、トラックを用いて荷物を運送する事業は「特定貨物自動車運送事業」に当たります(同条第3項)。

一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業を行う者(以下「一般貨物自動車運送事業者等」)は、法令の定めに基づき、荷主の指示によって30分以上の待機時間が発生した場合には、関連する事項を記録しなければなりません

  1. (1)運送事業者等に課される乗務等の記録義務

    一般貨物自動車運送事業者等は、事業用自動車に係る運転者(=トラックドライバー)の乗務につき、以下の事項を記録しなければなりません(貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条)。

    1. ① 運転者の氏名
    2. ② 事業用自動車を識別できる表示(自動車登録番号など)
    3. ③ 乗務の開始・終了の地点・日時、主な経過地点、乗務した距離
    4. ④ 運転を交代した場合には、その地点・日時
    5. ⑤ 休憩・睡眠をした場合には、その地点・日時
    6. ⑥ 車両総重量が8トン以上、または最大積載量5トン以上の普通自動車である事業用自動車に乗務した場合には、以下の事項
    • 貨物の積載状況
    • 荷主の都合により、集貨または配達を行った地点で待機した場合には、集貨地点や待機時間などに関する事項
    • 集貨地点等において、荷役作業または附帯業務を実施した場合には、集貨地点等、作業の開始および終了の日時、作業の内容、荷主の確認に関する事項
    1. ⑦ 交通事故または著しい運行の遅延、その他の異常な状態が発生した場合には、その概要・原因
    2. ⑧ 途中から対面での点呼ができない運行に切り替える場合において、切り替え以降の運行に関する指示があった場合には、その内容


    上記のとおり、車両総重量が8トン以上、または最大積載量5トン以上のトラックに乗務するドライバーが集貨または配達の地点で待機した場合には、待機時間等に関する事項を記録しなければなりません(同条第1号第6号ロ)

  2. (2)30分以上の待機時間は記録が義務付けられる

    国土交通省は、貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈・運用に関する実務基準を公表しています。
    参考:「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」(国土交通省)

    同実務基準によれば、待機時間から業務(荷積み・荷卸し・附帯作業など)と休憩時間を控除した時間が30分未満の場合は、記録を省略して差し支えないものとされています。その反対解釈として、30分以上の待機時間が発生した場合には、集貨地点や待機時間などに関する事項を記録しなければなりません。

    なお、集貨地点や待機時間などに関する事項の記録義務が発生するのは、荷主の指示等によって待機時間が発生した場合に限ります。運送事業者側の都合によって発生した待機時間については、記録義務の対象外となる点にご注意ください。

3、待機時間の給料の計算方法は?

待機時間に応じた給料の計算方法は、通常の労働時間と同様です。すなわち、労働時間に合算して集計した上で、残業時間が発生していれば、その種類および時間数に応じた残業代が発生します。

残業代の計算は、以下の手順で行います。計算方法がわからない場合は、弁護士にご相談ください。

  1. ① 1時間当たりの基礎賃金を計算する
  2. ② 残業時間数を集計する
  3. ③ 残業代を計算する


  1. (1)計算手順①|1時間当たりの基礎賃金を計算する

    まずは、以下の式によって1時間当たりの基礎賃金を計算します。

    1時間当たりの基礎賃金 = 1か月の総賃金 ÷ 月平均所定労働時間(※)
    (※月平均所定労働時間 = 年間所定労働時間÷12か月)


    なお、1か月の総賃金からは、以下の手当が除外されます。

    <総賃金から除外される手当>
    • 時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当
    • 家族手当(扶養人数に応じて支払うものに限る)
    • 通勤手当(通勤距離等に応じて支払うものに限る)
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当(住宅に要する費用に応じて支払うものに限る)
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金


    (例)
    1か月間に支給された総賃金(上記手当を除く)が28万円、月平均所定労働時間が140時間の場合
    →1時間当たりの基礎賃金は2000円


  2. (2)計算手順②|残業時間数を集計する

    次に、以下の種類ごとに残業時間数を集計します。

    1. ① 法定内残業:所定労働時間を超え、法定労働時間を超えない部分の労働時間
      ※所定労働時間:労働契約または就業規則によって定められた労働時間
      ※法定労働時間:労働基準法で定められた労働の上限時間(原則として1日8時間、1週間40時間。労働基準法第32条)

    2. ② 時間外労働(法定外残業):法定労働時間を超える部分の労働時間

    3. ③ 休日労働:法定休日における労働時間
      ※法定休日:労働基準法によって付与が義務付けられた休日(原則として1週間のうち1日のみ。労働基準法第35条)

    4. ④ 深夜労働:午後10時から午前5時までの労働時間


  3. (3)計算手順③|残業代を計算する

    最後に、以下の式によって残業代を計算します。

    残業代 = 1時間当たりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間数


    <割増率一覧>
    法定内残業 通常の賃金
    時間外労働 通常の賃金×125%
    ※月60時間を超える時間外労働については通常の賃金×150%(中小企業については2023年4月以降に適用)
    休日労働 通常の賃金×135%
    深夜労働 通常の賃金×125%
    時間外労働かつ深夜労働 通常の賃金×150%
    ※月60時間を超える時間外労働については通常の賃金×175%(中小企業については2023年4月以降に適用)
    休日労働かつ深夜労働 通常の賃金×160%


    (例)
    • 1時間当たりの基礎賃金が2000円
    • 時間外労働が20時間(うち深夜労働が3時間)
    • 休日労働が8時間(うち深夜労働が2時間)
    残業代
    =3000円×(125%×17時間+150%×3時間+135%×6時間+160%×2時間)
    =11万1150円


4、トラックドライバーの給料に疑問がある場合は弁護士にご相談を

運送事業者は、待機時間についても荷主に料金を請求するのが一般的です。
参考:「待機時間料について」(国土交通省)

使用者である運送事業者において料金収入が発生するのであれば、労働者であるトラックドライバーにも給与の形で還元されるべきでしょう。もし待機時間について給料が支払われていない場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

弁護士は、待機時間が労働時間に該当することを法的に裏付けた上で、労働時間を漏れなく集計し、適正額の残業代を請求します。使用者から支払われている給料の金額に疑問があるトラックドライバーの方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

5、まとめ

トラックドライバーの待機時間も労働時間に該当し、給料が発生する場合があります。もし待機時間について給料が支払われていない場合は、未払い給料の有無について弁護士にご相談ください。

ベリーベスト法律事務所は、未払い給料の請求に関するご相談を随時受け付けております。適切に給料が支払われていないとお感じのトラックドライバーは、お早めにベリーベスト法律事務所 奈良オフィスへご相談ください。

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