置き配の荷物が盗難された! 対応策や損害賠償請求について解説

2021年07月26日
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置き配の荷物が盗難された! 対応策や損害賠償請求について解説

新型コロナウイルスの感染症防止のため、奈良県はもちろん全国で、大手宅配サービスを中心とした非対面での荷物の受け取りを認める“置き配”サービスが実施されています。

玄関脇などに荷物を置いていく置き配のサービスは、接触や時間などを気にせずに荷物を受け取れる反面、荷物を盗まれてしまうリスクが心配になるかもしれません。

そこで今回は、置き配の盗難リスクを減少させるための対策や、もし盗難にあってしまった場合、補償をどこに請求できるかなどについて、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。

1、宅配便の“置き配”システムとは

置き配とは、宅配物を対面で引き渡すのではなく、あらかじめ指定された場所などに置くことで配達を完了させる仕組みのことです。

置き配に関わるのは、荷物を受け取る消費者、商品を発送する宅配サービス会社、商品の配達をする運送会社の3者ですが、置き配はそれぞれにとってメリットがあります。

● 消費者のメリット
対面で受け取らないので感染リスクを防止しやすくなる、荷物を受け取る時間を気にせずにすむ

● 宅配サービス会社のメリット
消費者が荷物の受取時間を気にしなくなる結果、サービスの利用者の増加が期待できる

● 配送会社のメリット
置き配をすれば再配達をしなくてすむので、生産性の向上やドライバーの労働環境の改善が望める


置き配には、さまざまなメリットがある一方で、ある程度の時間荷物を置きっぱなしにしておくことから、窃盗の被害にあう危険性があります。

2、置き配の盗難リスクを防ぐためには?

  1. (1)宅配ボックスを利用する

    置き配は対面せずに荷物を配達してもらうのに便利なサービスですが、家の外などに荷物を置いたままにしておくと、盗難にあってしまう危険性があります。

    置き配による盗難のリスクを防ぐための工夫としては、宅配ボックスを利用するのが、主な手だてといえるでしょう。宅配ボックスとは、業者が配達した荷物を入れるための箱です。宅配ボックスには鍵がついているので、配達された荷物を盗難から防止するのに役立ちます。

  2. (2)置き配に対応している保険に加入する

    置き配で盗難などの被害にあった場合の対策として、置き配に対応している保険に加入する方法があります。

    たとえば、ある大手保険会社は従来の補償を改定し、置き配の被害に対応できるように補償対象を拡大しています。

    補償の対象となり得る具体例は、自宅の玄関前に設置したボックスやバッグに配達された荷物や、自宅の玄関前やメーターボックスの中に配達された荷物などです。

    ただし、置き配の被害を受ける前に保険に加入しておく必要がありますまた、実際にどのようなケースで補償対象になるかは契約によって異なるので、加入している保険を確認してみることをおすすめします

3、置き配の盗難被害にあった場合の対応

  1. (1)宅配サービス会社に補償申請をする

    置き配のサービスを提供している宅配サービス会社によっては、置き配の盗難などについて補償をしている場合があります。

    たとえば、大手宅配サービスのAmazonでは、盗難などによって商品が届かなかった場合に商品を補償するサービスを実施しています。Amazonの補償サービスの基本的な申請方法は、Amazonのページまたはアプリで問い合わせることができます。

  2. (2)警察へ被害届を出す

    置き配の荷物が盗まれてしまった場合、警察に通報する方法があります。

    警察に通報して被害届を出すと、警察が荷物を盗んだ犯人を捜してくれる場合があります。ただし、監視カメラなど犯行の手がかりとなるものが不足している場合などは、犯人の特定が難航する可能性があります。

    注意点として、置き配の盗難について警察に被害申告したとしても、あくまで犯人探しやパトロールの強化などが期待できるだけです盗まれた商品の代替や返金などには対応していません

4、置き配による損害補償の請求先は?

  1. (1)宅配サービス会社や運送会社に連絡する

    宅配サービス会社や運送会社によっては、置き配の荷物が盗まれてしまった場合に、代替品の発送や返金などの補償を実施している場合があります。

    まずは会社に盗難の事実を伝えて、返金などの対応をしてもえるかを確認しましょう。

  2. (2)合意のない置き配は損害賠償請求ができる?

    置き配について合意がなかった場合や、荷物を置き配されることを知らなかった場合は、宅配サービス会社や運送会社に対して損害賠償請求できる可能性があります。

    経済産業省と国土交通省が令和2年にとりまとめた「置き配の現状と実施に向けたポイント」において、以下のように規定されています。

    売り主(宅配サービス会社)および運送人(運送会社)は、買い主と売り主が合意した方法(または合意したことが合理的に推定される方法)によって荷物を引き渡す必要がある。

    そのため、消費者が置き配に明らかに合意していないにもかかわらず、勝手に置き配をされたような場合は、盗難について損害賠償ができる可能性があります

    たとえば、消費者が通販の際に「直接受け取りたい」との要望を伝えたにもかかわらず、勝手に置き配をされて荷物を盗まれてしまった場合などに、損害賠償請求できる可能性があります。

    また、運送人は受け取りから引き渡しまでの間に運送品が滅失、損傷等した場合、受け取り・運送・保管・引き渡しについて注意を怠らなかったことを証明しない限り、損害賠償の責任を負います(商法第575条)。

    そのため、普段置き配をしていない家において、荷物を安全に保管できるボックスなどがないにもかかわらず、運送会社の配達人が勝手に置き配をして荷物を盗まれてしまった場合などは、運送会社に対して損害賠償請求できる可能性があります。

    ただし、実際に損害賠償請求が認められるかは、宅配サービス会社との契約や利用規約の内容、置き配時の具体的な状況などにもよりますので、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします

  3. (3)犯人が逮捕されたら損害賠償請求をする

    警察の捜査などによって荷物を盗んだ犯人が特定できた場合、刑事裁判ではなく民事裁判で損害賠償請求をする必要があります。

    刑事事件はあくまで犯人が有罪か無罪かを判断するための裁判なので、刑事事件で有罪が確定したとしても、それによって犯人に対して損害賠償請求が可能になるわけではありません。

    犯人に損害賠償請求をするには民事裁判を起こして、民法709条に基づく不法行為(他人の物を盗むことは一般に不法行為にあたるため)などを根拠として、賠償請求することになります

    いずれにせよ、犯人に対して賠償請求をするためには、賠償金を支払えるだけの資力が犯人にあるか、訴訟を起こせる程度に犯人の身元が特定されているかなどが重要になるので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

5、まとめ

置き配は配達人との接触や、受取時間帯を気にせずに荷物を受け取れるのが魅力ですが、玄関横などに単に置き配をするだけの場合、盗難のリスクが心配です。

置き配の盗難対策としては、暗証番号などでロックできる宅配ボックスの設置や、置き配に対応している保険に加入するなどがあります。

もし置き配の荷物を盗まれてしまった場合は、宅配サービス会社によっては補償サービスを実施している可能性があるほか、状況によっては運送会社などに損害賠償請求できる可能性があります。

合意していないにもかかわらず、置き配されて盗難被害に遭ってしまった、宅配サービス会社や運送会社が対応してくれないなどでお困りの際は、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスにご相談ください。消費者被害の実績が豊富な弁護士が、解決に向けて尽力いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています