借金の放置は危険! 裁判になる前に解決する債務整理の方法とは

2021年09月30日
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借金の放置は危険! 裁判になる前に解決する債務整理の方法とは

借金を放置すると遅延損害金が発生し、さらに借金を重ねたりなどの悪循環に陥ってしまう場合があります。多重債務が自己破産につながるケースもあり、注意が必要です。

令和2年度の司法統計(民事・行政事件数)によれば、奈良県の地方裁判所における破産の新受件数は719件でした。奈良を管轄する裁判所において、借金を整理するために自己破産などの手続きが利用されていることが伺えます。

また、借金をしても時効が完成すれば返済を免れると思われる方もいるかもしれません。しかし、借金について時効を完成させるのは簡単ではありません。

そこで今回は、借金を放置した場合にどのような危険性が発生するか、借金の時効の完成が難しい理由、借金を整理する方法などについて、債務整理の経験豊富な弁護士が解説します。

1、借金を放置する危険性

借金を放置するとどのような危険性があるのか、リスクの種類ごとに解説します。

  1. (1)遅延損害金が蓄積される

    借金を返済せずにいると、元本や利息の他に遅延損害金が発生します。遅延損害金とは、借金などの債務の返済を遅延した場合に発生する損害賠償金のことです。

    遅延損害金は返済日までに弁済が完了しなかった場合に発生するもので、返済日に1日でも遅れると、法的には遅延損害金の対象になります。

    注意点として、利息と遅延損害金は異なります。利息は返済日までの期日に対して発生するのに対し、遅延損害金は返済日以降の弁済までの期間に対して発生します。

    返済日から遅れれば遅れるほど遅延損害金は増えていくので、借金を放置するうちに遅延損害金が膨れ上がるリスクに注意しましょう。

  2. (2)信用情報機関に記録される

    借金を返済せずに放置していると、いわゆるブラックリストとして事故情報が信用情報機関に記録されてしまう可能性があります。

    信用情報機関とは、金融機関や貸金業者がクレジットカードやキャッシングなどの審査をする際に、返済能力や信用性などを参照する機関です。日本にはCICやJICCなど数種類の信用情報機関があります。

    信用情報機関に事故情報として記録されるのは住宅ローンの滞納、クレジットカードの料金の滞納、スマートフォンなど携帯端末の分割払いの滞納、債務整理の手続きなどです。

    事故情報が信用情報機関に掲載されると、クレジットカードやローンを申し込んでも審査に落ちる、既存のクレジットカードが使えなくなるなどの不利益が一般に生じるので、借金の長期間の放置には注意しましょう。

  3. (3)訴訟に発展する可能性がある

    借金を返済せずに放置し続けると、相手の取り立てが段階的に厳しくなっていくだけでなく、最終的に裁判所に訴えられて訴訟に発展する可能性があります。

    一般的な催促の流れとしては、まず電話で返済を促し、次に督促状が送付されます。それでも債務者が返済しなければ、内容証明郵便で請求書が送られてくる場合があります。

    内容証明郵便が送付されたあとも支払いがない場合、最終的に裁判所に訴えられて訴訟になる可能性があります。裁判で相手の請求が認められれば、それまで放置していた借金の残額や遅延損害金を支払わなければなりません。

    支払いができなければ給料や資産を差し押さえられる可能性もあるので、借金の放置は非常にリスクの高い行為です。借金は放置するのではなく、状況が悪化しないうちに弁護士に相談するのがおすすめです。

2、借金に時効はあるか

借金にも時効はあります。しかし、時効を実現して借金を消滅させるのは簡単ではありません。借金に関する時効制度について解説します。

  1. (1)消滅時効とは

    債権者が債務者に対して、法律で定められた一定の行為をしないまま一定の期間が経過すると、債務者等の援用により、債権者の権利が消滅します。これを消滅時効といいます。一般には時効と呼ばれることが多いでしょう。

    消滅時効が実現するには、まず一定の期間が経過する必要があります。これを時効期間といいます。

    時効期間については、民法改正があり、注意が必要です。現民法施行日(2020年4月1日)より前に生じていた債権については、旧民法の消滅時効期間が、同施行日以降に生じた債権については、現民法の消滅時効期間が、それぞれ適用されます。

    これまで、商事債権の時効期間等、借金の種類によって、時効期間に細かい規定がありました。しかし、現民法施行日以降に生じた債権について、消滅時効期間は、1)債権者が権利を行使することができることを知った時、2)権利を行使することができる時、という2つの起算点に、5年または10年というルールに変更となりました。もっとも、借金などの債務の消滅時効の期間については、なおも個別規定や契約を参照する必要がある場合もありますので、弁護士などの専門家にご確認いただければと思います。

  2. (2)時効の更新とは

    時効期間を待って借金を消滅させたいと思われる方もいるかもしれません。しかし、実際には借金について消滅時効が成立することは簡単ではありません。時効の更新という制度があるからです。

    時効の更新とは、時効期間が経過するまでの間に一定の事由が発生すると、それまで蓄積していた時効期間が無効になり、また新しい時効期間が進行するという制度です。

    時効の更新の事由になるのは、裁判上の手続き、差押え・仮差押え・仮処分、債務の承認などです。

    たとえば、10年の消滅時効があと1か月で完成するときに、債務の承認が行われた場合、それまで蓄積された消滅時効の期間は全て消滅し、また新たに10年の期間が経過しなければ時効は完成しません。借金の消滅時効の完成が難しい理由です。

  3. (3)裁判上の手続き

    裁判上の手続きとは、訴訟の提起、支払催促、和解や調停の申し立てなど、借金に関して裁判所が関与する手続きを行うことです。

    なお、債務者に内容証明郵便で借金の支払いを求めるなど、債権者が債務者に対して裁判所の手続き以外の方法で債務の履行を請求することを、催告といいます。

    催告をすると、消滅時効が完成するのを6か月の間防ぐことができますが、催告だけでは時効の更新の効果は生じません。

    催告に関して時効の更新をするには、催告をしてから6か月以内に、裁判所からの請求または差押え・仮差押え・仮処分をする必要があります。

  4. (4)差押え・仮差押え・仮処分

    差押え・仮差押え・仮処分とは、借金を抱えた債務者が手持ちの財産を勝手に処分しないように、債務者の財産の処分を禁止する手続きです。

    差押えをするには確定判決や公正証書などの債務名義が必要です。しかし、仮差押えや仮処分は、裁判所が必要と認めた場合に債務名義がなくてもできる仮の手続きであり、債務者が勝手に財産を処分しないよう迅速な対応が求められるケースにおいて、この処分が適用されることがあります。

  5. (5)債務の承認

    債務の承認とは、債務者が債権者に対して、自分が債務を有していることを認める行為です。元本の一部や利息を支払うことや、返済の猶予や一部免除を申し出ることも債務の承認にあたります。

    たとえば、債権者が「取りあえず利息だけでも支払ってくれ」と請求し、債務者が借金の利息を支払った場合、債務の承認をしたことになるので注意しましょう。

3、借金を整理するための手続き

借金を放置する行為はさまざまなリスクがあるので、放置せずに早急に整理方法を検討することが重要です。

借金を整理することを債務整理といい、主な方法は4つあります。

  1. (1)任意整理

    任意整理とは、債務者が債権者と交渉して債務の負担を軽くすることです。借金の総額を減らす、利息をカットする、月々の返済額を減らすなどを債権者に認めてもらうのが任意整理の例です。

    任意整理は裁判所での手続きが不要なので、手間や費用をかけずに債務を整理しやすく、会社などの勤め先に把握されにくいのがメリットです。一方、任意整理を認めるかどうかはあくまで債権者次第であり、必ず任意整理ができるとは限りません。

  2. (2)特定調停

    特定調停とは、債務者と債権者の話し合いを簡易裁判所等が仲裁し、返済条件など借金の負担を軽減できるように働きかける手続きです。特定調停を利用すると、利息制限法の規制を超える金利は減額の対象になります。

    当事者が話し合う点では任意整理に似ていますが、裁判所が間に入って調停が成立するように支援するのが特徴です。相手が同意しなければ調停は不成立となり、効果は得られないので注意しましょう。

  3. (3)個人再生

    個人再生とは、返済しなければならない債務を大幅に減額できる裁判所を介した手続きです。個人再生が認められると、最低弁済額規定は設けられていますが、概ね、元の債務の5分の最大で9割まで借金を減額できます。

    たとえば、借金の額が1000万円の方が個人再生を利用すると、概ね200万円、最大で100万円に減額される場合もあります。減額された債務は、原則として3年間の分割できちんと支払って完済する必要があります。

    個人再生は自宅を手放さずにすむのが特徴で、マイホームを所有している場合に便利です。ただし、住宅ローンは返済額の圧縮の対象外である点に注意しましょう。

  4. (4)自己破産

    自己破産とは、債務の返済ができなくなった個人の申立てにより開始される裁判所における破産手続のことです。裁判所による免責許可決定が確定すると、債務者は、債務の金額にかかわらず、借金を返済しなければならない負担から解放されます。

    他の債務整理の方法は、一般に減額のみで債務自体は免責されないのに対し、自己破産は債務の支払い自体が免責されるのが特徴です。自己破産は効果が大きい反面、他の債務整理と比べると一般に手続きに時間がかかります。

    自己破産及び免責許可は必ず認められるとは限りません。ギャンブルが理由で何度も自己破産をしようとする場合などは、裁判所が免責を認めない可能性があります。

4、借金問題は早期に弁護士へ相談を

借金の問題を抱えている場合は、放置せずに早めに弁護士に相談するのが重要です。

借金の問題の相談先としてさまざまな機関や専門家が存在しますが、一般的なアドバイスにとどまったり、借金の金額によって代理人になれなかったりする場合があります。

債務整理に知見のある弁護士に相談すれば、依頼人の状況に応じてどのように行動すべきか、対策としてどのような選択肢があるかなどを個別具体的に提案してくれるだけでなく、借金の金額に関係なく代理人になることができます。

弁護士の受任通知による借金の取り立ての停止、利息制限法に基づく引き直し計算や過払い請求、状況に応じた適切な債務整理の方法の提案など、借金問題を弁護士に依頼するのは多くのメリットがあります。

5、まとめ

借金を放置してしまうと、遅延損害金が膨らむ、信用情報機関に記録される、最終的に訴訟を起こされるなどの危険性があります。

借金にも消滅時効がありますが、民事訴訟などの裁判上の手続きや、債務の承認などがあれば時効が更新されてしまうので、時効を利用するのは簡単ではありません。

借金などの債務を整理する方法は任意整理や自己破産などがありますが、それぞれ特徴やメリット・デメリットがあるので、債務整理に知見のある弁護士に相談するのがおすすめです。

借金の放置でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスにご相談ください。債務整理に知見のある弁護士が、借金問題を解決するための最適な方法を見いだすために、全力でサポートいたします。

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