後見監督人とは? 増加する背景と役割、手続きの流れを解説
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令和2年10月1日時点において、奈良市内の人口は35万5011人で、そのうち65歳以上の割合が31.2%でした。特に75歳以上の人口は平成7年以降増え続けています。奈良県のみならず高齢化が進む社会では、家族が認知症などで判断能力が低下した場合、財産の管理で本人や家族が悩むケースは少なくありません。
そうした場合の対策として、本人や家族の申し立てにより、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらうことができます。また、あらかじめ締結した任意後見契約に基づき、判断能力が低下した際には任意後見人に財産管理を任せることも可能です。これらの成年後見人・任意後見人の職務を監督する「後見監督人(成年後見監督人、任意後見監督人)」は、本人の利益を保護するために重要な職責を担っています。
今回は、後見監督人の職務や役割、後見監督人の選任が必要となるケース、適任者や選任の手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「奈良市の高齢者を取り巻く現状と課題」(奈良市))
1、後見監督人とは?
後見監督人とは、成年後見人・任意後見人の職務を監督する者をいいます。
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(1)成年後見制度の概要
後見監督人について理解するためには、その前提として「成年後見制度」について知っておく必要があります。
成年後見制度は、判断能力が低下した方のサポート役を選任し、法律行為を適切に行うことができるようにするための制度です。
認知症などで判断能力が低下した場合、詐欺や悪徳商法の被害に遭いやすくなったり、浪費によって財産を失ったりするリスクが高まるため、成年後見制度をストッパーとして活用することが推奨されます。
民法上の成年後見制度(法定後見)には、本人の判断能力低下の程度に応じて、「後見(成年後見)」「保佐」「補助」という3つが用意されています。
その中でも、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」(民法第7条)というもっとも進行度の高い状態を要件とするのが「後見」です。
後見人には、日常生活に関するものを除いて、すべての法律行為の代理権が付与され、本人の代わりにあらゆる法律行為をする役割が求められています。
法定後見とは別に、あらかじめ締結した契約に基づいて後見人を選任する「任意後見」を利用することもできます。
任意後見の場合、本人が元気なうちに後見人を指定することができ、さらに代理権の範囲も自由に設定できるなど、法定後見よりも柔軟性が高い点がメリットです。 -
(2)後見監督人の職務・役割
後見監督人は、成年後見人や任意後見人の職務を監督する立場として、家庭裁判所により選任されます(任意後見の場合は「任意後見監督人」と呼ばれます)。
後見監督人・任意後見監督人の職務は、以下のとおりです。
<後見監督人の職務(民法第851条)>- ① 後見人の事務を監督すること
- ② 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること
- ③ 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること
- ④ 後見人やその代表者と、被後見人との利益が相反する行為について、被後見人を代表すること
<任意後見監督人の職務(任意後見契約に関する法律第7条第1項)>- ① 任意後見人の事務を監督すること
- ② 任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。
- ③ 急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること
- ④ 任意後見人やその代表者と、本人との利益が相反する行為について、本人を代表すること
後見監督人・任意後見監督人のどちらにも共通して、後見人の職務の監督や、家庭裁判所との窓口となることを通じて、本人の利益を保護する役割が求められています。
2、後見監督人の選任が必要となるケース
後見監督人の選任に関するルールは、法定後見と任意後見の場合で異なります。
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(1)法定後見の場合|家庭裁判所が必要と認めたときに選任される
法定後見の場合、家庭裁判所が必要と認めた場合に限り、後見監督人が選任されます(民法第849条)。
したがって、後見監督人が常に選任されるわけではなく、ケース・バイ・ケースで選任されたりされなかったりするのです。
後見監督人が選任されることが多いのは、本人の親族が後見人になる場合です。親族が後見人の場合、法的な知識の乏しさや、親族同士という特殊な関係性が災いして、適切に後見人としての職務を行わない事態が懸念されます。
そこで、家庭裁判所が後見監督人を選任して、後見人の職務の適正化を図ろうとすることが多いのです。
一方、弁護士などの専門家が後見人となるケースでは、後見監督人が選任されないケースも多くなっています。 -
(2)任意後見の場合|常に選任される
任意後見の場合、任意後見監督人は常に選任されます。
これは任意後見契約の効力が、任意後見監督人が選任された時から生じるものと法律で定められているためです(任意後見契約に関する法律第2条第1号)。
任意後見は法定後見と異なり、契約によって自由に後見人を指定できるうえ、代理権の範囲も自由に設定できます。そのため、後見人の選任等については、家庭裁判所のコントロールが及びません。
そこで、家庭裁判所の人選による任意後見監督人の選任を必須とすることによって、任意後見人の職務の適正化が図られているのです。
3、後見監督人の適任者は?
後見監督人(任意後見監督人)の候補者は、申し立てを行う本人や親族などが推薦することができます。
それでは、後見監督人(任意後見監督人)としては、どのような人が適任なのでしょうか。
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(1)後見人から独立している親族
後見人の職務を監督するという性質上、後見監督人は、後見人から独立した立場にある者でなければなりません。
後見監督人として親族を推薦するのは構いませんが、後見人との関係性を考慮したうえで、後見人の意見に影響を受けずに適切な判断ができる人を選ぶべきでしょう。
なお、後見監督人はあくまでも家庭裁判所の判断で選任されるため、推薦した親族がそのまま選任されるとは限らない点に注意が必要です。 -
(2)弁護士などの専門家
中立公正な立場から後見人を監督するという役割上、弁護士などの専門家は、後見監督人として適任といえるでしょう。
親族内に適任者が見当たらない場合や、後見人の職務の透明性・公正をいっそう確保したい場合には、弁護士などに後見監督人への就任を依頼することをおすすめします。 -
(3)後見監督人の欠格事由に注意
後見監督人・任意後見監督人には、以下に該当する方はなれませんので注意しましょう。
<後見監督人(任意後見監督人)の欠格事由>- ① 未成年者
- ② 家庭裁判所により解任された法定代理人・保佐人・補助人
- ③ 破産者
- ④ 被後見人に対して訴訟をし、またはした者ならびにその配偶者・直系血族
- ⑤ 行方の知れない者
- ⑥ 過去に親権喪失または管理権喪失の宣告を受けた者
- ⑦ 後見人の配偶者・直系血族・兄弟姉妹
特に親族を後見監督人に推薦する場合には、上記の欠格事由に該当しないかをよく確認しましょう。
4、後見監督人を選任する手続き
最後に、後見監督人(任意後見監督人)を選任する手続きを、法定後見・任意後見のそれぞれについて解説します。
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(1)法定後見の場合|タイミング、申し立ての有無はケース・バイ・ケース
法定後見の後見監督人は、被後見人本人・親族・後見人の請求によって選任される場合と、家庭裁判所の職権で選任される場合の両方があります。
また、選任のタイミングについても、後見開始の当初から選任されることもあれば、途中から選任されることもあり、ケース・バイ・ケースです。
家庭裁判所の職権による場合は、特に手続きは不要です。
これに対して、後見監督人の選任を申し立てる場合は、家庭裁判所に申立書を提出する必要があります。その際、後見監督人の候補者を推薦することができますので、事前に適任者を見つけて相談しておきましょう。 -
(2)任意後見の場合|任意後見監督人の選任を申し立てる
任意後見の場合、後見開始の当初から、任意後見監督人を選任することが必須となります。
そのため、任意後見監督人の選任は、常に利害関係者の申し立てによって行われます。
任意後見監督人の選任を申し立てることができるのは、以下のいずれかの者です(任意後見契約に関する法律第4条第1項)。
- 本人
- 配偶者
- 四親等内の親族
- 任意後見人
なお、任意後見監督人の選任申し立てに必要な書類は、以下の裁判所ホームページを参照するほか、申立先の裁判所にもご確認ください。
参考:「申し立てをお考えの方へ(任意後見監督人選任)東京家庭裁判所後見センター」
5、まとめ
後見監督人・任意後見監督人は、成年後見制度の運用を適正化し、本人の利益を保護するために重要な役割を担っています。
後見監督人・任意後見監督人としては、中立公正な立場から業務を行う職責を負っている弁護士が適任といえます。
ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスでは、成年後見制度に関するアドバイスや、手続きの代行を随時承っております。後見・保佐・補助の申し立てや、任意後見制度を利用した認知症対策の実施を考えている方は、ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所 奈良オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています