遺産分割をしないデメリットは? 相続を放置したときのリスクと注意点

2022年12月22日
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遺産分割をしないデメリットは? 相続を放置したときのリスクと注意点

奈良県の人口動態総覧によると、2020年における奈良県内の死亡数は1万4678人で、出生数の7831人を大幅に上回りました。

家族が亡くなっても遺産分割しないまま放置していると、相続人はさまざまなリスクを負うことになります。遺産分割協議は非対面で進めることもできますので、弁護士のサポートを受けながら早めに着手しましょう。

今回は、遺産分割をしないことによるリスク、遺産分割を非対面で行う方法や注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。

出典:「令和2年人口動態総覧(数・率)」(奈良県)

1、遺産分割をしないことによるリスク

家族が亡くなった後、遺産分割をしない状態が長期間続くと、相続人は以下のリスクを負うことになります。

  1. (1)相続財産が共有のままになる

    遺産分割が終わっていない相続財産は、相続人全員の共有となります(民法第898条)。

    共有状態の財産を処分するには、共有者全員の同意が必要です(民法第251条)。他人に賃貸する場合には、共有持分の過半数を有する共有者の同意を要します(民法第252条)。

    したがって、共有状態にある相続財産を活用するためには、複数の相続人が共同して意思決定を行わなければなりません。それゆえに、相続人間で意見が対立すれば、相続財産を満足に活用できない事態となります。

    また、共有状態の相続財産を巡る争いが発生すれば、相続人間の関係性の悪化は避けられません。

    このように、遺産分割をせず相続財産を共有状態のままにしておくと、共有の性質から生じるトラブルに巻き込まれるリスクがあります。

  2. (2)数次相続により相続人が増える

    被相続人が亡くなった後、遺産分割が終わらないうちに相続人が亡くなるケースがあります。

    これを「数次相続」といいます。

    数次相続が発生すると、相続権がさらに相続された結果、相続人の数が増えることが多いです。そうなると、遺産分割協議はさらに紛糾し、なかなか遺産分割を完了できなくなるおそれがあります。

    遺産分割をせずに時間が経過すると、数次相続によって相続人が増えてしまうリスクがどんどん高くなります。遺産分割トラブルの深刻化を防ぐためには、数次相続が発生するより前に、遺産分割を完了できるように努めるべきでしょう。

  3. (3)相続税の軽減制度が利用できない

    相続税には、以下の軽減制度が設けられています。

    ① 配偶者の税額の軽減
    配偶者が相続した遺産につき、1億6000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで、相続税が非課税となる制度です。
    参考:「No.4158 配偶者の税額の軽減」(国税庁)

    ② 小規模宅地等の特例
    一定の限度面積まで、相続した土地の相続税評価額が最大80%減額される特例です。
    参考:「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(国税庁)


    これらの特例を活用すれば、相続税を大幅に軽減できる可能性があります。

    ただし、配偶者の税額の軽減と小規模宅地等の特例は、遺産分割が終わっていなければ適用を受けることができません。

    相続税の申告期限である、相続の開始を知った日の翌日から10か月後までに遺産分割が終わらなければ、上記軽減制度の適用を受けない内容で相続税申告を行う必要があります。

    なお、相続税申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付したうえで、遺産分割の完了後に更正の請求を行えば、さかのぼって上記軽減制度の適用を受けることはできます。しかし、それでは二度手間となるうえに、軽減されていない税額を暫定的に納付しなければならない点に注意が必要です。

  4. (4)他の相続人が不動産の共有持分を処分するおそれあり

    相続財産に不動産が含まれている場合、他の相続人が不動産の共有持分を第三者に譲渡してしまう可能性があります。

    共有持分の譲渡は、共有者単独の判断で行うことができます。見知らぬ第三者が共有関係に入ってくると、売却・賃貸などについて意見が対立し、不動産を十分に活用できないリスクが高まってしまうでしょう。

    このような事態を避けるためにも、遺産分割は早めに完了することをお勧めいたします。

2、遺産分割に期限はある?

遺産分割には、法律上の期限は存在しません。したがって、そもそも遺産分割を行うかどうかや、遺産分割の時期については、相続人が自由に決められます。

しかし、基本的には相続税申告の期限までに、遺産分割を終えておくことが望ましいでしょう相続税申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月後です

もし相続税申告の期限までに遺産分割が終わらないと、法定相続分に基づく相続を前提として、暫定的に相続税申告を行う必要があります。後に遺産分割が完了した場合は、遺産分割の内容に従った更正の請求または修正申告が必要です。

このように、遺産分割の完了が遅れると、相続税申告が二度手間となってしまいますので、できるだけ早めに遺産分割を完了するよう努めてください。

3、遺産分割協議は対面でなくてもよい

相続人の住んでいる地域が離れており、対面で集まることが難しい場合には、非対面で遺産分割協議を行うことも可能です。

  1. (1)非対面で遺産分割を行う主な方法

    遺産分割を行う際には、相続人同士で遺産分割の方法を話し合う必要があります。話し合いの形式は何でもよく、メール・SNS・ビデオ通話・電話などを通じて、非対面で遺産分割協議を行うことも可能です

    非対面で遺産分割協議を行う場合は、話し合いの内容についての議事録を作成し、オンラインでその内容を回覧しながら調整を行うのが便利でしょう。

  2. (2)遺産分割協議書の作成・調印は必須|郵送で行う際の注意点

    遺産分割協議を非対面で行う場合にも、対面で行う場合と同様に、遺産分割協議書の作成・調印は必須となります。

    遺産分割協議書は、合意内容を明確化して後日のトラブルを防ぐ機能を持っています。
    また、金融機関の相続手続きや、不動産の名義変更などを行う際にも、遺産分割協議書が必要となります。

    そのため、遺産分割の方法について相続人全員の合意が調ったら、速やかに遺産分割協議書を作成・調印しましょう

    相続人同士が遠方に居住している場合、遺産分割協議書の作成・調印は郵送で行うのが一般的です。

    郵送で遺産分割協議書を作成・調印する方法には、以下の2通りがあります。

    1. ① 1通の遺産分割協議書を回覧して、1人ずつ署名・押印を行う
    2. ② 相続人の人数分の遺産分割協議書を作成して、各通に各相続人が署名・押印を行う


    ①の方法は、相続人同士が遠方の場合は時間がかかるのが難点です。

    これに対して②の方法であれば、比較的短期間で相続人全員の署名・押印を集めることができます。

    ただし、各相続人に発送した遺産分割協議書の内容が異なると、後にトラブルに発展する可能性が高いので、念のため齟齬(そご)がないかを確認しておきましょう。

4、遺産分割について弁護士ができるサポート

遺産分割に関する手続きへの対応は、弁護士への依頼がおすすめです。弁護士は、以下のようなサポートを通じて、スムーズに遺産分割を完了できるように尽力します。

  1. (1)相続手続きの一括代行

    弁護士は、相続に関する幅広い手続きについて対応できます。また、税理士や司法書士などの隣接士業とも連携し、相続手続き全体を一括してサポートすることが可能です。

    特に、ご自身で相続手続きを行うのは大変だと感じている方は、弁護士に一括代行を依頼することをおすすめします。対応に要する時間と労力が省け、精神的なご負担も軽減されるでしょう。

  2. (2)遺産分割トラブルの調整・解決

    弁護士の最大の特徴は、遺産分割トラブルの調整・解決を取り扱うことができる点です。
    相続人同士が揉めてしまっているケースにおいて、トラブルを解決するためのアドバイスやサポートを行うことは、法律上、弁護士だけに認められています

    相続トラブルが発生すると、当事者間の話し合いだけで解決するのは困難です。やり取りがヒートアップしてしまい、かえってトラブルが深刻化する例もよく見られます。

    弁護士にご相談いただければ、相続人同士の関係性を悪化させることなく、円滑に相続トラブルを解決するための方法をご提案します。トラブルになる前に、まずは弁護士にご相談ください。

5、まとめ

ご家族の死後、遺産分割をしないままでいると、さまざまなトラブルに巻き込まれるリスクを負います。

法律上は、遺産分割に期限は設けられていません。しかし、各種トラブルのリスクを考慮すると、できる限り相続税申告の期限が到来するまでには、遺産分割を完了しておくことをおすすめします。

遺産分割を早期に完了するためには、各手続きのスケジュールを把握したうえで、計画的に対応することが大切です。そのためには、弁護士のサポートを活用しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄など、さまざまな相続手続きについて、お客さまのニーズに合わせたサポートをオーダーメードにご提供いたします。遺産相続のお悩みや疑問点は、ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所 奈良オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています