墓荒らしとは│どんな罪? 警察に捜査されている場合の対処法は?

2022年06月30日
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墓荒らしとは│どんな罪? 警察に捜査されている場合の対処法は?

あまり馴染みのない犯罪名ですが、刑法では、「墳墓発掘罪」と「礼拝所不敬罪」という犯罪が規定されています。

過去には、世界的に有名な写真家が霊園の墓所で女性モデルの写真を撮影したとして、礼拝所不敬罪などで罰金を科されたこともありますので、聞いたことがある方もいるかもしれません。また、友人と肝試しなどの気軽な気持ちで、墓地に立ち入り、墓石などを破壊してしまうと墳墓発掘罪や礼拝所不敬罪に該当する可能性もあります。

しかし、安易な行動は犯罪につながる可能性があるということを意識して行動することが大切です。今回は、墓荒らしで問われる可能性のある罪について、ベリーベスト奈良 オフィスの弁護士が解説します。

1、墳墓発掘罪とは

墳墓発掘罪とは、どのような犯罪なのでしょうか。以下では、墳墓発掘罪の概要と成立要件について説明します。

  1. (1)墳墓発掘罪の概要

    墳墓発掘罪とは、一般の宗教感情を保護するために設けられた犯罪であり、墳墓を発掘する行為を処罰の対象にしています。

    墓を掘り返したり、墓石を破壊したりするなどの墓荒らしは、墳墓発掘罪に該当する可能性があります。墳墓発掘罪が成立した場合には、2年以下の懲役に処せられます(刑法189条)

  2. (2)墳墓発掘罪の成立要件

    墳墓発掘罪が成立するためには、以下の要件を満たす必要があります。

    ① 客体
    墳墓発掘罪の客体は、墳墓です。「墳墓」とは、人の死体、遺骨、遺髪などを埋葬して死者を祭り、礼拝対象とする場所のことをいいます。

    なお、ペットの死骸が埋葬されている場所については「人」という要件を満たさないため、墳墓発掘罪は成立しません。

    また、かつて墓所であった古墳のように、すでに礼拝の対象となっていない場所については、墳墓には該当しません。ただし、古墳などの墓荒らしをした場合には、墳墓発掘罪ではなく、文化財保護法によって処罰される可能性があります

    ② 行為
    墳墓発掘罪は、墳墓を発掘することによって成立します。「発掘」とは、墳墓の覆土を除去したり、墓石などを破壊・解体する方法によって墳墓を損壊することをいいます。覆土の一部でも除去すれば発掘にあたりますので、墳墓内の棺桶などが外部に露出したかどうかは問われません。

    なお、墓の移転や修繕のための発掘といったように、発掘が正当な根拠に基づいて行われた場合には、墳墓発掘罪は成立しません。ただし、事前に市区町村長の許可を得ていなければ、墓地埋葬法に違反する可能性がありますので注意が必要です。

2、礼拝所不敬罪とは

礼拝所不敬罪とは、どのような犯罪なのでしょうか。以下では、礼拝所不敬罪の概要と成立要件について成立します。

  1. (1)礼拝所不敬罪の概要

    礼拝所不敬罪とは、墳墓発掘罪と同様に一般の宗教感情を保護するために設けられた犯罪であり、神祠、仏堂、墓所などの礼拝所に対する不敬な行為を処罰の対象にしています。

    礼拝所不敬罪は、墓所も保護の対象にしていますので、墓荒らしによって墓石を押し倒したりした場合には、礼拝所不敬罪が成立する可能性があります

    礼拝所不敬罪が成立した場合には、6か月以下の懲役、禁錮または10万円以下の罰金に処せられます(刑法188条1項)。

  2. (2)礼拝所不敬罪の成立要件

    礼拝所不敬罪が成立するためには、以下の要件を満たす必要があります。

    ① 客体
    礼拝所不敬罪の客体は、宗教的な崇敬の対象になっている、神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所です。

    • 神祠……神道により神を祭った施設のことをいいます。
    • 仏堂……仏教による寺院その他の礼拝所のことをいいます。
    • 墓所……人の遺体・遺骨を埋葬・安置して死者を祭祠し、記念する場所のことをいい、墓碑・墓標の有無は問われません。
    • その他の礼拝所……キリスト教、イスラム教などの信者が宗教的崇敬をささげる場所のことをいいます。


    礼拝所不敬罪の客体は、いずれも礼拝の対象物になっていることが要件となりますので、住職の住居、祭壇とは別棟になっている社務所、寺務所、庫裡などは礼拝所不敬罪の客体には含まれません。

    ② 行為
    礼拝所不敬罪は、公然と不敬な行為をすることによって成立します。

    「公然」とは、不特定または多数人が認識することができる状況のことをいいます。実際に不特定または多数人に行為が目撃されたかどうかを問わず、そのような状況で行為がなされれば公然性の要件は満たします。

    「不敬な行為」とは、礼拝所の尊厳や神聖を害する行為のことをいいます。たとえば、墓の仏石を押し倒したり、侮辱的言辞をあびせたり、汚物を投げつけたり、落書きするなどの行為が不敬な行為にあたります。

3、その他問われうる罪

墓荒らしをした場合には、墳墓発掘罪・礼拝所不敬罪の他に、以下の罪に問われる可能性があります。

  1. (1)器物損壊罪

    器物損壊罪とは、他人の物を壊したり、傷つけたりした場合に成立する犯罪です(刑法261条)。

    墓荒らしをして、墓石を傷つけたり、落書きをしたりした場合の他、墓地に侵入する際に、備え付けの備品などを壊した場合にも器物損壊罪に問われる可能性があります

    器物損壊罪が成立した場合には、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処せられます。

  2. (2)建造物侵入罪

    建造物侵入罪とは、正当な理由なく他人の建造物などに侵入した場合に成立する犯罪です(刑法130条)。

    建造物には、建物だけでなく、垣根、塀、門のような建物の周囲を取り囲むなどして建物の利用に供されることが明示されている土地についても含まれます。

    そのため、墓荒らしのために霊園や墓地に立ち入る行為は、正当な理由なく建造物に侵入したことになりますので、建造物侵入罪が成立する可能性があります。

    建造物侵入罪が成立した場合には、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられます。

  3. (3)墳墓発掘死体損壊等罪

    墳墓発掘死体損壊等罪とは、墳墓発掘罪と死体損壊等罪の結合犯です。墳墓発掘死体損壊等罪は、不法に墳墓の発掘をした人が土葬された死体、火葬された遺骨などの損壊、遺棄、領得をした場合に成立します。

    墳墓の発掘について正当な権限のある人が死体などの損壊、遺棄、領得をした場合には、墳墓発掘死体損壊等罪ではなく、死体損壊罪が成立します

    墳墓発掘死体損壊等罪が成立した場合には、3月以上5年以下の懲役に処せられます(刑法191条)。

4、警察に捜査をされているなら弁護士に相談を

墓荒らしをしたことで警察の捜査を受けている方は、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)身柄拘束の可能性がある

    墓荒らしをした場合には、墳墓発掘罪や礼拝所不敬罪の他にもさまざまな犯罪が成立する可能性があります。捜査機関が被疑者について逃亡または罪証隠滅のおそれがあると判断した場合には、逮捕・勾留などの身柄拘束を受ける可能性があります。

    逮捕された場合には、最長で72時間の身柄拘束となり、その後勾留されれば勾留延長も含めると最長で20日間も身柄拘束を受けることになります。その間は、原則として留置施設の外に出ることはできませんので、一般の社会生活を送る方にとっては大きな不利益となります。

    逮捕中に被疑者本人と面会することができるのは弁護士だけです。取り調べに対する適切なアドバイスを受けるためにも早めに面会を求めるようにしましょう。

  2. (2)適切な弁護活動により有利な処分獲得の可能性が高まる

    墓荒らしをしたことによって犯罪の嫌疑をかけられた場合には、そのまま放置していてもよい結果は得られません。

    逮捕・勾留されれば身柄拘束をされることになりますし、検察官によって起訴されてしまうと、現実は、ほぼ確実に有罪判決となってしまいます。有罪判決となれば執行猶予がついたとしても前科になりますので、日常生活においてさまざまな不利益が生じるリスクがあります。

    このような場合には、早めに弁護士に相談をすることによって、不利益な処分の回避・軽減に向けた弁護活動をすることが可能になります

    特に、身柄事件では、検察官が起訴または不起訴の判断をするまでの限られた時間内で、より効果的な弁護活動を行う必要があります。そのため、少しでも早く弁護士に相談をすることによって、弁護士が行うことができる選択肢も増え、効果的な弁護活動が可能になります。

5、まとめ

肝試しなどで廃墟や墓地などに立ち入ることもあるかもしれません。遊び半分で行った行為が墳墓発掘罪、礼拝所不敬罪、建造物侵入罪、器物損壊罪などの犯罪行為にあたることもあります。

このような行為をしてしまった場合には、警察による捜査が行われ、被疑者として逮捕・勾留されるリスクもありますので十分に注意しましょう。

もし、該当する行為をしてしまったことで捜査機関から嫌疑をかけられているという場合には、早めに弁護士に相談をすることが大切です。刑事事件に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています