郵便貯金の相続に期限はある? ゆうちょ銀行の相続手続きの注意点
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被相続人が亡くなって遺産の相続がはじまると、相続人同士で行う遺産分割手続きや、相続した不動産の処分・必要に応じて行う確定申告など、さまざまな手続きをすることになります。
この手続きのひとつに、預貯金の相続手続きがあります。預貯金は銀行や共済などがありますが、なかでも、ゆうちょ銀行の貯金口座は、相続にあたって一般の銀行とは異なる特殊なルールがあります。
奈良市にも多くのゆうちょ銀行の支店や郵便局の窓口があり、これらの窓口でゆうちょ銀行の口座の相続手続きが行われるケースもあるでしょう。そこで今回は、ゆうちょ銀行の郵便貯金の相続手続きの方法や、手続きに期限があるかなど、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。
1、ゆうちょ銀行の利用率は高い
ゆうちょ銀行は、郵政民営化によって2007年10月に発足した銀行です。国営の特殊法人である日本郵政公社が行っていた事業のうち、主に郵便貯金事業などを引き継いで実施されています。
全国に拠点があるため、銀行と比べて、地方などでも利用率が高いことが特徴です。ゆうちょ銀行が公開するデータによれば、ゆうちょ銀行における通常預金口座数は、約1億2000口座です(2020年3月末時点)。昭和60年以降日本の人口は1億2000万人以上で推移しているので、単純計算で人口1人につき、ゆうちょ銀行の通常預金口座を1つ持っていることになります。
2、ゆうちょ銀行の相続手続きの特徴
ゆうちょ銀行は日本全国に窓口があります。銀行の場合、被相続人が口座を開設した支店に出向かないと相続の手続きができないケースがありますが、郵便貯金の相続の手続きは基本的にどこの窓口でも行うことができます。
ただし、ゆうちょ銀行は、手続きに時間がかかる可能性があります。ケースにもよりますが、大きな不備がなくても、相続の手続きが完了するまでにおよそ1か月程度かかると見積もっておくと安心でしょう。また、相続の手続きを郵送で行うことはできず、窓口に出向く必要があります。
3、ゆうちょ銀行の相続手続きの注意点
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(1)相続確認表を記入する必要がある
ゆうちょ銀行の郵便貯金の相続手続きをするには、「相続確認表」という書類を記入する必要があります。相続確認表は、被相続人と相続人の相続関係をゆうちょ銀行が把握するための書類です。相続確認表はゆうちょ銀行の窓口で入手できるほか、ゆうちょ銀行のホームページでもダウンロードできます。
相続確認表は全部で2枚あります。1枚目には被相続人、代表相続人、第1順位の相続人の情報を記入します。2枚目には第2順位と第3順位の相続人や、遺言執行者(指定されている場合)の情報を記入します。
なお、第1順位・第2順位・第3順位とは、相続の優先順位です。
民法では、原則として下記の通り定められています。- 第1順位……被相続人の子(直属卑属)
- 第2順位……被相続人の父母、祖父母
- 第3順位……被相続人の兄弟姉妹
代表相続人については、以下より詳しく解説します。 -
(2)手続きができるのは代表相続人のみ
相続確認表には、代表相続人の氏名や住所を記載する欄があります。代表相続人とは、相続人が複数いる場合、ゆうちょ銀行の相続手続きを代表して行う人物のことです。ゆうちょ銀行の口座の相続の手続きができるのは、相続人の中でひとりだけです。
また、ゆうちょ銀行での相続手続きによる払戻金は、代表相続人の通常貯金口座(ゆうちょ銀行)に入金されます。代表相続人がゆうちょ銀行の通常預金口座を持っていない場合は、あらかじめ口座を開設しておくと手続きがスムーズに進みやすくなります。
4、ゆうちょ銀行の相続手続きの流れ
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(1)口座があるか不明な場合
被相続人がゆうちょ銀行に預金口座を持っているかが不明な場合や、口座の記号番号がわからない場合は、ゆうちょ銀行に「貯金等照会書(相続用)」を提出すれば、開設した預金口座の有無や、口座の記号番号を教えてくれます。
貯金等照会書はゆうちょ銀行の窓口で入手できるほか、ゆうちょ銀行のホームページでダウンロードすることもできます。
なお、口座の残高は貯金等照会書ではわからないので、残高証明書という書類を別途取得する必要があります。残高証明書を発行してもらうには、貯金等照会書の必要箇所に記載すればよく、別途他の書類を記入する必要はありません。残高証明書の発行には口座の記号番号と届け印が必要です。 -
(2)相続確認表を窓口で提出する
相続確認表の記入が終わったら、ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口に提出します。
被相続人がゆうちょ銀行に口座を持っているかわからない場合は、相続確認表を提出する前に、貯金等照会書(相続用)を提出して照会をかけておくと、手続きがスムーズに進みやすくなります。 -
(3)必要書類を揃えて提出する
相続確認表を提出してから1〜2週間程度で、相続の手続きに必要な書類の案内(必要書類のご案内)がゆうちょ銀行から届きます。
ゆうちょ銀行の相続手続きで必要になることが多い書類の例として、以下のものがあります。なお、実際の必要書類はケースによって異なります。- 相続確認表(原則として相続人全員の署名・実印が必要)
- 相続人全員の印鑑証明書(原則として6か月以内のもの)
- 遺言書(あれば)
- 遺産分割協議書(遺産分割協議を行っている場合)
- 委任状(相続人以外が手続きをする場合)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の通帳とキャッシュカード(現存する場合)
必要書類を揃えたら、必要書類の原本全てをゆうちょ銀行または郵便局の窓口に提出します。提出する窓口は、原則として相続確認表を提出した窓口です。 -
(4)払戻金を受け取る
必要書類を窓口で提出してから1〜2週間程度で、代表相続人の通常預金口座に相続払戻金が入金されます。希望する場合は、代表相続人の名義に名義変更済みの通帳を簡易書留郵便で郵送してもらうこともできます。
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(5)相続手続きの期限
ゆうちょ銀行の口座の相続手続きに期限があるかについては、この期限までに請求しなければ相続の手続きができなくなるというような、明確な期限は存在しません。
しかし、以下の2点をふまえると、口座預金の相続の手続きは早めに済ませておくことをおすすめします。- 銀行が時効を援用するかは別として、銀行の預金債権は5年の消滅時効にかかる
- 手続きを早めに済ませて相続財産を確定しないと、後になって相続人の間で揉めやすい
被相続人の口座はいくつあるのか、誰がゆうちょ銀行の代表相続人になるかなど、相続手続きで思いのほか時間がかかることは、珍しくありません。相続が開始されたらすぐに遺産相続の経験が豊富な弁護士に相談することで、安心して手続きを進めることができるでしょう。
5、まとめ
被相続人のゆうちょ銀行の預金口座の相続手続きをする場合、被相続人が口座を開設した支店だけでなく、全国どこの窓口でも手続きができます。ただし、ゆうちょ銀行の相続手続きは独自のルールがあり、相続関係を示すために相続確認表という書類を記入して提出しなければならない、必要書類は必ず窓口に出向いて提出しなければならない、などの特徴があります。
郵便貯金はもちろん、そもそも預金口座をいくつ持っているのかわからない、どのように遺産分割すべきか悩んでいる、などに遺産相続でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスにご相談ください。相続問題の経験が豊富な弁護士が、あなたやご家族にとって最適な解決方法を提案いたします。
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