面会交流のルールを破られた・破ってしまった時の対処法

2022年06月30日
  • その他
  • 面会交流
  • ルール
  • 破る
面会交流のルールを破られた・破ってしまった時の対処法

裁判所が公表している司法統計の統計資料によると、令和2年度に奈良家庭裁判所に申し立てのあった面会交流調停事件の件数は、192件でした。2日に1回は、面会交流調停の申し立てがあったことになり、多くの方が面会交流に関するトラブルを抱えていることがわかります。

子どものいる夫婦が離婚する場合、親権がない親が離婚後も継続的に子どもと会うために面会交流についての取り決めを行います。しかし、当初は取り決めにしたがって面会交流が実施されていたけれど、途中からルールを破ることで面会交流の実施に支障が出ることがあります。

そのような場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。今回は、面会交流のルールが破られた場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。

1、面会交流のルールとは

面会交流の取り決めをする際には、さまざまなルールを定めることになります。面会交流で定める一般的なルールとしては、いかのようなものが挙げられます。

  1. (1)面会交流の頻度

    面会交流をどのくらいの頻度で実施するかを定めます。月1回、週1回などお互いの都合はもちろん、子どもの負担も考慮した上で、面会交流の頻度を

    決定するようにしましょう。

  2. (2)面会交流の時間

    1回あたりの面会交流の時間を定めます。面会交流の時間を定める場合には、開始時間と終了時間を定めるなど1回あたりの時間を明確にしておくことで、お互いの予定も調整しやすくなります。

  3. (3)面会交流の場所

    面会交流を行う場所を限定する場合には、面会交流の場所を定めます。面会交流に不安がある場合には、最初は人目のある公園やレストランなどを指定しておき、徐々に指定をなくすという方法も検討するとよいでしょう。

  4. (4)子どもの受け渡し方法

    非監護親(子供と一緒に暮らしていない親)が監護親(子供と一緒に暮らしている親)の自宅に子どもを迎えに行くのか、駅などで待ち合わせをするのかなどの子どもの受け渡し方法を定めることがあります。お互いに連絡を取り合うことができるのであれば、子どもの受け渡し方法は定めずに、その都度協議するという方法でも問題ありません。

  5. (5)連絡方法

    DVやモラハラを理由とする離婚の場合には、離婚後に相手と連絡を取り合うことが難しい場合があります。そのような場合には、面会交流の連絡をどのような方法で行うのかを決めておく必要があります。当事者同士で連絡を取り合うことが難しい場合には、お互いの両親を窓口にするという方法もあります。

  6. (6)プレゼントのやり取り

    面会交流の都度、子どもに対して高額なプレゼントをされると困るという場合もあります。そのため、面会交流の際にプレゼントのやり取りを認めるかどうかやプレゼントのやり取りを認める場合にはどのタイミング(誕生日、クリスマスなど)で行うのかを決めます。

  7. (7)学校行事への参加の可否

    非監護親としては、子どもが学校でどのような生活を送っているのかが気になるところです。しかし、いきなり子どもの学校行事に非監護親が出席すると、監護親としても困惑してしまいますので、学校行事への参加を認めるかどうかや認める場合にはどの学校行事(運動会、音楽会、参観日など)への参加を認めるかを決めます。

  8. (8)宿泊の有無

    夏休みや年末年始などの長期休暇には、泊まりでの面会交流を実施することがあります。泊まりの面会交流を認める場合には、どの時期に、どれくらいの期間宿泊を認めるのかを決めます。

  9. (9)その他

    上記のようなルールの他にも定めておいた方がよいルールがある場合には、お互いの合意によって自由に定めることができます。「面会交流中に相手の悪口を言わない」などのルールは面会交流にあたって当然のルールになりますが、あえてルールとして定めることによって相手に厳守を求める効果もあります

2、面会交流のルールを破られた場合の対処法

面会交流のルールが破られた場合には、以下のような対処法をとることになります。

  1. (1)面会交流のルールを守るよう求める

    面会交流のルールを破られた場合には、まずは、当初取り決めた面会交流ルールを順守して、取り決めどおり面会交流を実施するよう相手に求めるようにしましょう。

    面会交流のルールが破られたとしても、相手にもやむを得ない事情があった場合もあります。相手からなぜルールを破ったのかという理由を確認するとともに、納得できる理由であれば次回からはしっかりとルールを守るように注意するとよいでしょう。

  2. (2)履行勧告

    面会交流のルールは、当事者同士の話し合いで取り決めることもあれば、家庭裁判所の調停や審判によって定められることもあります。面会交流のルールが家庭裁判所の調停や審判によって定められた場合には、家庭裁判所の履行勧告という制度を利用することができます。

    履行勧告とは、家庭裁判所の調停や審判で決まった内容を守らない相手に対して、裁判所が義務の履行をするように勧告する手続きのことをいいます。当事者から義務を守るように言っても従わない場合であっても、公的な第三者である裁判所から履行勧告がなされれば、素直に従う場合もありますので、一定の効果が期待できます

  3. (3)間接強制

    家庭裁判所の調停や審判で面会交流のルールが決まれば、間接強制という方法でルールどおりの面会交流の実施を求めることができます。

    間接強制とは、相手方が裁判所の命じた履行命令に従わない場合に、金銭の支払いを命じることによって間接的に義務の履行をさせる方法です。

    履行勧告と異なり、間接強制は強制力のある方法ですので、履行勧告に従わない場合には有効な手段となります。ただし、間接強制を利用するためには、面会交流のルールが明確に定められている必要があります。

  4. (4)面会交流調停の申し立て

    当事者同士で定めた面会交流のルールが守られない場合で、当事者同士の話し合いでも解決しない場合には、家庭裁判所に面会交流調停の申し立てを行います。

    家庭裁判所の調停では、当事者が定めた面会交流のルールやルールを破った理由・経緯などを踏まえて、より詳細な面会交流のルールを定めます。抽象的なルールだと今後も面会交流のルール違反が生じる可能性がありますので、調停ではできる限り詳細なルールを定めることが大切です。

    なお、面会交流調停が不成立になった場合には、自動的に面会交流審判に移行して、裁判官が面会交流について判断することになります

3、面会交流のルールをやむを得ず破る場合

面会交流のルールが定められていたとしても、やむを得ない理由でルールを守ることができないこともあります。そのような場合には、以下のような対応をしましょう。

  1. (1)面会交流のルールを守れない理由を説明

    監護親としては、自分や子どもの都合などからやむを得ず面会交流のルールを破ることになる場合もあります。自分ではやむを得ない理由だと考えていても、それを知らない相手からは面会交流のルールを破ったことを激しく非難される可能性があります。

    毎日子どもと会っている監護親と異なり、非監護親は面会交流が子どもと唯一交流することができる機会ですので、待ちわびていた面会交流がルール違反により実施されないとなると、その落胆は大きなものとなります。

    面会交流は、今後も長期間継続していくことになりますので、当事者間にわだかまりが生じないようにするためにも、面会交流のルールを守れない場合には早めに相手に連絡をして、相手の納得を得るように努めましょう

  2. (2)面会交流調停の申し立て

    面会交流のルールが守れない理由を説明したとしても、相手が納得してくれない場合には、家庭裁判所の面会交流調停を利用するという方法もあります。面会交流調停は、面会交流を求める非監護親だけでなく、面会交流の実施を求められている監護親も適切なルールを定めるために申し立てをすることができます。

    子どもをめぐる問題については、どうしても感情的になってしまいますので、当事者同士では解決できない場合には、調停委員という第三者が介入してくれる面会交流調停を利用してみるとよいでしょう。

4、事情に応じて面会交流のルールを再検討しよう

子どもの成長に応じて当初定めた面会交流のルールでは面会交流の実施が難しくなることもあります。そのような場合には、事情に応じて面会交流のルールを再検討する必要があります。

  1. (1)まずは当事者で話し合いをしてルールの変更をする

    子どもが成長するにつれて、面会交流に対する子どもの考え方にも変化が生じますし、塾や部活、友達との予定を優先したいと考えることもあります。

    面会交流は、子どものために行うものですので、子どもの福祉の観点から当初の面会交流ルールでは不都合な事態が生じた場合には、一度定めた面会交流のルールであってもそれを変更することが可能です。

    そのため、面会交流のルールを変更する必要が生じた場合には、お互いに納得できるルール作りをするためにも、まずは当事者で話し合いをしてルールの変更をするようにしましょう。

    当事者間で新たな面会交流のルールが決まった場合には、後日争いにならないようにするためにもその内容を書面に残してようにしましょう。

  2. (2)話し合いで決まらない場合は面会交流調停を利用する

    当事者同士で新たな面会交流ルールの取り決めが難しいという場合には、家庭裁判所に面会交流調停の申し立てを行います。

    面会交流調停では、家庭裁判所の調査官が子どもの意向などを調査してくれますので、客観的な第三者の立場から子どもの意見を聞くことができます。

    監護親から子どもが面会を減らしたいと言っていると聞かされても納得できない非監護親であっても、家庭裁判所の調査官の調査によって子どもの意向が明らかになれば納得してくれることもあります。

  3. (3)弁護士に依頼することも有効な手段

    ご自身で面会交流のルールの変更のために相手と交渉するのが難しいという場合には、弁護士を利用することも検討してみましょう。弁護士に依頼をすることによって、相手との交渉をすべて任せることができますので、交渉をしなければならないという負担は大幅に軽減されます。

    話し合いによる解決が困難な場合には、面会交流調停の申し立てや期日への同行などのサポートをしてくれますので、少しでも不安がある場合には、弁護士に相談をしてみるとよいでしょう

5、まとめ

面会交流は、子どもの健全な成長・発育のために必要不可欠なものとなりますので、親の一方的な都合によって面会交流のルールを破ることは認められません。面会交流のルールを定めてもきちんと守られないという場合には、それを解決するための法的手段がありますので、まずは弁護士に相談しましょう。

面会交流に関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています