「新婚生活に疲れたから離婚したい」は認められる? 弁護士が解説

2024年04月09日
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「新婚生活に疲れたから離婚したい」は認められる? 弁護士が解説

奈良市が公表している離婚に関する統計資料によると、令和3年の奈良市内での離婚件数は、438件でした。そのうち同居期間が1年未満での離婚が24件あることから、新婚にもかかわらず離婚を選択している夫婦が一定数いることがわかります。

結婚していざ一緒に生活を始めてみると生活スタイルや習慣、考え方などの違いからすれ違いが生じることも少なくありません。元々は他人同士だった2人が一緒に生活するのですから多少のすれ違いは仕方がないとしても、あまりにも新婚生活がストレスに感じるような場合には、離婚も選択肢のひとつとして検討する方もおられるでしょう。

本コラムでは、新婚生活に疲れたという理由で離婚できるのかどうかや、新婚夫婦が離婚することのメリットやデメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。

1、「新婚だけど、いろいろ疲れたから離婚したい」は認められる?

新婚生活で疲れてしまい離婚を考える原因にはさまざまなものがあります。
以下では、新婚生活での疲労が離婚したい気持ちにつながってしまうことについて、よくある原因を紹介します。

  1. (1)モラハラや浮気などの問題行為がある

    モラハラや浮気などの問題行為があった場合には、たとえ新婚だとしても離婚を考える十分な理由になります。

    むしろ、新婚であるにもかかわらずそのような問題行為をしてしまう人とは長く婚姻生活を続けていくことは困難である可能性が高いため、早めに離婚を決断したほうがよい場合もあるでしょう。

  2. (2)他の人と暮らす生活にストレスがたまる

    結婚するとそれまでは別々に生活していた男女が一緒に生活をすることになります。
    自分の家族であれば、生活の不満なども言いやすいですが、結婚したばかりの新婚夫婦の場合には、なかなか言いたいことも言い出せません。
    そのようなストレスが積み重なっていくと、相手と一緒に生活するのが苦痛に感じてしまうこともあるでしょう。

    婚姻生活を重ねていけば、慣れや諦めなどから多少のすれ違いが生じても許容できるかもしれませんが、新婚夫婦ではそうもいかないため、離婚を検討される方もおられます。

  3. (3)義理の両親のことで不満がある

    結婚すると、結婚相手だけではなく、結婚相手の両親とも良好な関係を築いていかなければなりません。
    しかし、義理の両親は、結婚相手以上に距離がある存在であるため、義理の両親との関係で不満が生じることも少なくないのです。

    義理の両親との関係が険悪になっても結婚相手が味方してくれればよいですが、そうでない場合には、家庭に居場所がなくなって離婚を考えるきっかけになります。

  4. (4)セックスレス

    恋人の関係だったときは頻繁にセックスをしていた男女あっても、結婚をきっかけにセックスレスになることもあります。

    たとえば、夫婦になれば一緒に過ごす時間が増えますが、家事や仕事をこなしている間に疲労がたまったことが原因で、セックスレスになってしまう場合があるのです。

  5. (5)性格や価値観、金銭感覚など考え方の違い

    夫婦として一緒に生活をしていくと、性格や価値観、金銭感覚などの考え方の違いに気付くことがあります。

    多少の違いであればお互いに話し合って歩み寄ることもできますが、すれ違いが大きいと一緒に生活するのが難しいと感じることもあるでしょう。

  6. (6)借金や離婚歴などの隠し事が発覚した

    結婚する際に相手から伝えられていた情報が嘘であった場合には、相手を信頼することができず、離婚を考えるきっかけになります。

    たとえば、「借金がない」と言っていたにもかかわらず多額の借金があった場合や、「離婚歴はない」と言っていたにもかかわらず元配偶者との間に子どもがいた場合など、結婚生活をするうえで重要な情報に偽りがあったなら、その後の結婚生活を続けていくことに不安を感じて離婚を決意される方もおられるでしょう。

2、新婚で離婚するメリット・デメリット

新婚で離婚することには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

  1. (1)新婚で離婚するメリット

    新婚で離婚するメリットとしては、以下の点が挙げられます。

    ① 財産分与などの離婚条件で争う可能性が低い
    新婚で離婚をする場合には、夫婦で築いた財産もほとんどありませんので、財産分与で揉める可能性が低いです。
    また、新婚で子どもがいない時期に離婚をすれば、親権や養育費や面会交流などで揉めることもありません。

    このように、新婚のうちに離婚をすると離婚条件で争う可能性が少なくなるため、すぐに離婚を成立させやすくなります。

    ② 精神的負担が少ない
    離婚をすることで多かれ少なかれ精神的苦痛が生じます。
    婚姻生活が長くなればなるほど離婚による喪失感は大きくなりますので、それによる精神的苦痛も大きくなるでしょう。

    これに対して、新婚夫婦の場合には失うものも少ないため、精神的な負担は抑えやすいといえます。

    ③ 人生の貴重な時間が無駄にならない
    新婚のうちから離婚を考えさせるような相手と過ごす時間が長くなればなるほど、人生の大切な時間が失われていく、という考え方もあります。

    また、再婚や再就職をするにしても、年齢的に若い方が断然に有利ですので、離婚の決断は早めにすることが大切です。
  2. (2)新婚で離婚するデメリット

    新婚で離婚するデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

    ① 周囲から理解されにくい
    周囲から祝福されて結婚をしたにもかかわらずすぐに離婚してしまったら、周囲の家族や友人をがっかりさせてしまう可能性があります。

    また、DVや不貞行為など相手に明確な離婚原因がある場合には周囲の理解や同情を得られるとしても、新婚生活に疲れたという理由だけで離婚してしまったら、周りの人間からあきれられてしまうおそれがあるでしょう。

    ② 再婚で障害になる可能性がある
    以前とは異なり現在では再婚のハードルが下がっているとはいえ、男性と女性のどちらにおいても、一度離婚をした後に新しい結婚相手を見つけて再婚することは、初婚の相手を見つけるよりも難しいといえます。

    たとえば新たな異性と交際を始めても、過去に離婚歴があるということで敬遠されてしまったり、相手の両親の理解を得ることができず破談になったりする可能性があるでしょう。

    ③ 離婚後の手続きが面倒
    離婚後の手続きは、新婚での離婚とそうでない離婚で大きく変わるところはありません。
    しかし、新婚での離婚の場合には、結婚時に住所変更や名義変更をしたにもかかわらず、それから間もないタイミングで再び住所変更や名義変更を行わなければなりません。

    短期間のうちに同じような手続きを繰り返さなければならないため、面倒に感じる方も多いでしょう。

3、離婚を考え直すときには何ができる?

新婚での離婚を考え直した場合には、以下のような方法で離婚を回避できる可能性があります。

  1. (1)夫婦のコミュニケーションを増やす

    新婚生活が疲れたと感じるのは、慣れない新婚生活のストレスやお互いのすれ違いによるところが大きいといえます。
    このようなストレスやすれ違いを減らすには、夫婦のコミュニケーションを増やすことが重要です。

    夫婦といえども、あくまで他人同士です。
    コミュニケーションがなければ相手の考えを知ることができず、また自分の考えを相手に理解してもらうことはできません。
    夫婦の会話が増えていけば、それにつれて夫婦の関係性にも改善の兆しがあらわれる可能性もあるでしょう。

  2. (2)カウンセリングを受診する

    夫婦2人だけの話し合いでは問題が解決できないときは、夫婦でカウンセリングを受診するのも関係改善に向けた有効な対処法です。
    カウンセリングでは、夫婦の問題点を整理して、夫婦関係の再構築に向けた適切な解決方法を提案してくれます。

    夫婦カウンセリングは、夫婦2人で受診したほうが、より効果的なアドバイスを受けることができます。
    しかし、2人での受診が難しいという場合には、まずはひとりだけで受診することも可能です。

  3. (3)しばらく別居をしてみる

    新婚生活が疲れたと感じる場合には、しばらく別居をするということも検討してください。
    別居というと離婚を前提としたネガティブなイメージを持たれることが多いですが、夫婦関係の改善を目指すというポジティブな理由から別居される方もおられます。

    同じ空間で生活していると、ストレスから相手に対して強く当たってしまうこともあり、そのままでは関係性は悪化する一方です。
    しばらく別居をしてお互いの関係性を見直すことで、相手のいいところや自分の悪かったところが見つかり、新婚生活をやり直すきっかけになるかもしれません。

4、新婚でも離婚を決めた場合にしなければならないこと

どうしても夫婦関係の改善が難しく、「離婚するしかない」と決断した場合には、以下のような事項を検討する必要があります。

  1. (1)DVや不倫があった場合には慰謝料請求が可能

    夫から暴力を振るわれた、妻が不倫をしていたという場合には、離婚時に慰謝料を請求することが可能です。
    ただし、慰謝料請求をする際には、配偶者がDVや不倫をしたということを証拠によって証明する必要があります。
    そのため、離婚を切り出す前に、相手の有責性を基礎づける証拠をしっかりと集めておくことが大切です。

    十分な証拠がない状態で離婚を切り出してしまうと、証拠を処分されてしまい慰謝料請求ができなくなるおそれがある点に注意してください。

  2. (2)子どもがいる場合には親権、養育費、面会交流をどうするのか

    子どもがいる場合には、離婚時にどちらが親権者になるかを決めなければなりません
    新婚夫婦が離婚する場合には、子どもの年齢が幼かったり赤ん坊であったりすることも多いため、基本的には母親が親権者になる可能性が高いといえます。
    とはいえ、必ず母親が親権者になると決まっているわけでもないため、まずは夫婦で話し合っていくことが大切です。

    また、子どもがいる場合には、離婚後の養育費や面会交流についても取り決める必要があります
    親権が取れなかったとしても、面会交流を充実させることで子どもと一緒に過ごす時間を確保することも可能です。
    親権の獲得が難しいときは、面会交流の条件をしっかりと取り決めるようにしましょう。

  3. (3)夫婦で築いた財産がある場合は、財産分与の話し合い

    新婚夫婦の場合には、夫婦の共有財産はそこまで多くはないため、財産分与でトラブルになることも少ないといえます。
    もっとも、新婚夫婦でも夫婦の共有財産がある場合には当然に財産分与の対象になるため、少ないからといって権利を放棄してしまうのではなく、しっかりと財産分与の話し合いをすることが大切です。

    適切な離婚条件を定めるためには、専門家である弁護士に相談することも検討してください。

5、まとめ

新婚であっても、生活のストレスや価値観の相違などの理由で離婚を考える場合があります。新婚での離婚には特有のメリットとデメリットがあるため、それらをしっかり理解したうえで判断することが大切です。

離婚を決意された場合には、離婚の進め方や離婚条件の決め方などについて、専門家である弁護士にアドバイスを受けることをおすすめします。離婚をするかどうか迷われている方も、まずはベリーベスト法律事務所 奈良オフィスにご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています