酒癖の悪さは離婚理由になる? 離婚成立のためにやるべき4つの準備
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奈良県が公表している統計資料によると、令和3年の奈良県内の離婚件数は、1837件でした。そのうち、奈良市内の離婚件数は438件でした。
お酒を飲むと性格が豹変する夫や妻(以下、配偶者)との生活は、肉体的にも精神的にも大きなストレスになります。特に、モラハラやDVによる暴言・暴力がある場合、幼い子どもを抱えている場合などは、真剣に離婚を考える方もいるかもしれません。
しかし、酒癖の悪さを理由に離婚することはできるのでしょうか。今回は、酒癖の悪さを理由に離婚ができるのか、離婚をする場合に必要となる準備などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
参考:奈良県「令和3年人口動態総覧(数・率)」
1、酒癖が悪い人の特徴は?
酒癖が悪い人には、以下のような特徴があります。
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(1)毎回泥酔するまでお酒を飲む
毎日お酒を飲んでいたとしても、適度な量をたしなむ程度であれば酒癖が悪いとはいえません。
しかし、毎回泥酔して、記憶をなくすくらいお酒を飲んでいるようであれば悪癖です。そのような状態だと、アルコール依存症のおそれもある危険な状態といえるでしょう。 -
(2)酔うと性格が変わる
普段は優しい性格なのに、お酒を飲むと人格が豹変するような人は、酒癖が悪い人といえます。本人がそのことを自覚してお酒の量を控えてくれればよいですが、アルコールへの依存度が強くなり繰り返しお酒に手を出してしまうのであれば、家族にとっても深刻な問題です。
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(3)モラハラ・DV(暴言を吐く、暴力を振るう)
お酒に酔うと、家族に対して人格を否定するようなモラハラ的な暴言を吐いたり、暴力を振るってDVをしたりする人がいます。過度な飲酒によって、自分の行動の抑制がきかなくなるのが原因ですが、そのことを認識していながらお酒を控えることができないようであれば酒癖が非常に悪いといえます。
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(4)セクハラや性行為を強要する
お酒を飲んで気分がよくなると、性的な物言いをしたり、過度なボディータッチをしたりするなどセクハラをする人がいます。このようなセクハラは家庭内で起こる行為で、さらには配偶者の同意なく性行為を強要するケースに発展する場合もあります。夫婦間であっても合意のない性行為は犯罪となる可能性があり、離婚理由になり得ます。
2、酒癖が悪い配偶者と離婚することはできる?
配偶者の酒癖の悪さを理由に離婚をすることができるのでしょうか。
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(1)お互いに離婚に合意しているのであれば離婚は可能
酒癖の悪い配偶者にストレスを感じ、このまま婚姻生活を続けることはできないと、離婚を検討する方もいるでしょう。
離婚を考えた場合、最初に行うのは夫婦間における離婚に向けた話し合いです。話し合いで離婚することを「協議離婚」といいます。
話し合いによって、互いに離婚することに合意しているのであれば、どのような理由でも離婚ができます。そのため、配偶者の酒癖の悪さが離婚の理由であったとしても、配偶者が離婚に合意していれば、離婚が可能です。 -
(2)離婚調停でも酒癖の悪さを理由に離婚することは可能
夫婦の話し合いでは離婚の合意に至らない場合には、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行います。
離婚調停は裁判所が選任した調停委員が仲介し、話し合いによる解決を目指す手続きです。この場合も、調停の話し合いで合意に至れば、どのような理由でも離婚ができます。そのため、配偶者の酒癖が悪いという理由でも離婚は可能です。
調停では、客観的な第三者である調停委員が話し合いを進めてくれますので、夫婦だけの話し合いとは異なり、冷静かつスムーズな話し合いが期待できます。 -
(3)離婚を拒否された場合でも法定離婚事由があれば離婚は可能
離婚調停でも離婚の合意に至らない場合には、最終的に家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになります。
離婚訴訟は、協議離婚や調停離婚とは異なり、裁判官が夫婦の離婚を認めるか判断します。その際には、民法が定める以下の法定離婚事由が存在するかどうかがポイントになります。法定離婚事由- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
「酒癖が悪い」という理由は、上記の法定離婚事由のいずれにも該当しません。そのため、配偶者の酒癖が悪いという理由だけでは、裁判で離婚することはできません。
しかし、酒癖の悪さから派生して、婚姻関係が破綻している場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」やその他の事由に該当するものとして、離婚が認められる可能性があります。
なお、具体的なケースとしては、以下のケースが挙げられます。- 酒癖の悪い配偶者から頻繁に暴力を振るわれたり、暴言を吐かれたりした
- 酔った配偶者から無理やり性行為を強いられた
- 酔った勢いで配偶者以外の第三者と性行為を行った
- 酒代にお金を費やし、必要な生活費を渡さない
3、離婚したいと思ったらやるべき4つの準備
酒癖の悪い配偶者と離婚を検討中の方は、以下のような準備を進めていきましょう。
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(1)離婚するための証拠の収集
配偶者との話し合いで離婚ができる見込みがあるなら証拠は必要ありません。しかし、離婚に応じてくれない可能性がある場合には、裁判も視野に入れて、離婚するための証拠を集める必要があります。
離婚裁判になった場合には、離婚を請求する側で法定離婚事由を立証していかなければなりません。
酒癖の悪い夫から暴力を振るわれたり、暴言を吐かれたりした場合は、- 音声や動画で録画しておく
- いつ何を言われたかメモなどで記録しておく
- 心療内科など病院にかかった場合の通院履歴を残す
など、証拠を残すようにしましょう。
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(2)財産分与の対象となる資産のリストアップ
離婚する際には、財産分与によって、夫婦の共有財産を2分の1ずつ分けることができます。共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産です。
財産分与を請求する場合には、財産をすべてリストアップする必要があります。自分名義の財産であれば特に問題ありませんが、相手が名義の財産については、どのような財産があるか情報提供を求めなくてはなりません。
この時、財産隠しなどが行われる場合もありますので、あらかじめ相手の財産を調査しておくことが大切です。 -
(3)離婚後の生活の拠点の確保
離婚をすれば夫婦は、別々に生活することになります。しかし、酔った夫が暴力をふるったり、幼い子どもがいたりする場合など、離婚前でも早急に別居が必要となるケースもあるでしょう。
離婚を伝える前から離婚後の生活の拠点を確保しておくことが大切です。 -
(4)経済的自立の準備
別居中は、婚姻費用を請求することによって配偶者から生活費の支払いを受けることができます。しかし、離婚をすれば他人となり扶養義務も消滅しますので、子どもの養育費以外のお金をもらうことができなくなります。
離婚前から仕事をしている方であればよいですが、専業主婦(主夫)の方は、経済的自立に向けた準備を進めていく必要があります。
4、離婚問題を弁護士に相談するメリット
離婚問題でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)離婚の可否を判断してもらえる
配偶者が離婚に応じてくれない場合には、法定離婚事由がなければ離婚をすることができません。
酒癖が悪いという理由だけでは、法定離婚事由には該当しませんので、酒癖の悪さによってどのような弊害が生じているのかを調査・検討する必要があります。
法定離婚事由の該当性の判断は、法的知識や経験が必要です。まずは離婚問題の実績がある弁護士に相談して、法定離婚事由の有無を判断してもらうとよいでしょう。 -
(2)相手との交渉の窓口になってもらえる
配偶者と離婚する場合には、まずは配偶者との話し合いによって離婚を目指すことになります。
しかし話し合いでは、お互いに相手の不満を言い合ったり批判し合ったりして、なかなか合意できないことは珍しくありません。また、離婚後の生活拠点の確保や経済的自立に向けた準備も並行して行わなければならない場合、肉体的にも精神的にも大きなストレスとなります。
このような負担を少しでも軽減するためにも、まずは弁護士に相談しましょう。弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人となり相手との交渉を行ってくれます。本人が直接交渉の矢面に立つ必要はありませんので、安心して離婚の準備を進めることができます。 -
(3)適切な条件で離婚できる可能性が高くなる
離婚する際、子どもがいれば親権、養育費、面会交流などの取り決めが必要になります。
また、配偶者が離婚に至る原因を作っていた場合には、有責配偶者に対する慰謝料請求も検討しなければなりません。さらに、婚姻期間が長い夫婦では、共有財産も多いため財産分与を求めていく必要があります。
このように離婚時にはさまざまな離婚条件の取り決めが必要になるため、弁護士の適切なサポートがなければ不利な条件での離婚になりかねません。離婚後も安定した生活を送るためにも、まずは、弁護士にご相談ください。
5、まとめ
酒癖の悪い夫から暴力を振るわれたり、暴言を吐かれたりすれば、今後一緒に生活していくことが難しい、離婚したいと考えるのは当然のことです。
ただし酒癖が悪いという理由だけでは離婚は難しいため、酒癖の悪さから派生して暴力や暴言を吐かれているという証拠を集める、経済的自立に向けて備えるなど、離婚に向けた準備が必要になります。
酒癖の悪い夫との離婚をお考えの方は、まずは、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています