離婚後に親権変更する方法|15歳以上の子どもがいる場合の注意点も解説
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奈良県では、「奈良県スマイルセンター」を設置し、ひとり親家庭に向けて就業支援などのサポートを行っています。
離婚の時点では元配偶者に親権を譲ったものの、その後子どもとの関係性などに変化が生じ、親権を取り戻したいと考えるようになった方もいらっしゃるかと思います。「親権者変更調停」を申し立てると、離婚後であっても親権者を変更できる可能性があります。
ただし、親権を変更する必要性について、説得的な主張を行う必要がありますので、弁護士に相談するのが得策です。また、子どもが15歳以上である場合には、親権変更に当たって子どもの意見が重視されますので、子どもと十分にコミュニケーションをとっておきましょう。
今回は、離婚後の親権変更する方法(手続き)や、子どもが15歳以上である場合の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「就業支援」(奈良県))
1、離婚後に親権者を変更する方法
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(1)親権者変更調停
離婚時に一度取り決めた親権者は、「親権者変更調停」という手続きを通じて変更することができます。親権者変更調停は、家庭裁判所で行われる手続きです。
調停委員が夫婦双方の言い分を公平に聴き取ったうえで調整を行い、話し合いによって親権者の変更に関する合意(調停成立)を目指します。
もし調停が不成立となった場合には、家庭裁判所が審判を行い、親権者の変更可否について判断を行います。
(参考:親権者変更調停(裁判所)) -
(2)親権者変更調停を申し立てる条件
親権者変更調停は、「子の親族」に申立権があります(民法第819条第6項)。
具体的には、子どもから見て六親等内の血族である人が、親権者変更調停を申し立てることができます(民法第725条第1号)。六親等とは、本人を中心に六世代を隔てた親族のことで、父母、祖父母、曾祖父母(そうそふぼ)、おじおば等を含みます。
2、親権者変更ができるケース・できないケース
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(1)両親が同意すれば親権者を変更できる
親権者の変更は、親権者変更調停が成立した場合、および審判によって親権者変更が認められた場合に行うことができます。
親権者変更調停では、どちらが親権を持つべきかについて、調停委員を交えた話し合いが重ねられますが、最終的には当事者である両親の合意が尊重されます。 -
(2)親権者変更に際して考慮されるポイント
親権者の変更について、両親が合意できない場合には、家庭裁判所が審判を行います。
審判によって親権者を変更すべきかどうかの判断に当たっては、子の福祉(利益)にかなうものであるかどうかという観点が重視されます。
具体的には、以下の事情等を総合的に考慮したうえで、親権者の変更可否が判断されます。- 変更を希望する事情
- 現在の親権者の意向
- 今までの養育状況
- 両親双方の経済力
- 家庭環境
- 子の年齢
- 子の性別
- 子の性格
- 子の就学の有無
- 子の生活環境
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(3)審判により親権者変更ができるケースの例
上記の考慮要素を踏まえると、以下に挙げるケースでは、家庭裁判所が審判によって親権者変更を認める余地があると考えられます。
- 現在の親権者が、子どもの養育に対して極めて消極的である
- 現在の親権者の経済力が、親権を持っていない親よりも著しく劣っている
- 現在の親権者と子どもの性格上の相性が悪く、親権を持っていない親の方になついている
- 子どもが親権者の変更を強く望んでいる
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(4)審判により親権者変更ができないケースの例
反対に、以下に挙げるようなケースでは、審判による親権者の変更は認められにくいでしょう。
- 親権を持っていない親が子どもへの思いの強さを訴えているものの、現在の親権者による養育に大きな問題はない
- 現在の親権者の経済力は平均的であり、親権を持っていない親と比べても大きな差はない
- 親権を持っていない親に子どもはなついているが、親権者と子どもの間の関係性も比較的良好である
- 親権者を変更すると、子どもが転校を強いられるなど、生活環境が大きく変わってしまう
- 子どもが親権者の変更を拒否している
3、親権者変更調停の手続きの流れ
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(1)調停申し立て│必要書類・手数料
まず、家庭裁判所に対して調停申し立てを行う必要があります。
<申立先>
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所
<主な必要書類>- 申立書とその写し1通
- 申立人の戸籍全部事項証明書
- 相手方の戸籍全部事項証明書
- 子ども(未成年者)の戸籍全部事項証明書
<手数料>- 子ども1人につき収入印紙1200円分
- 連絡用の郵便切手
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(2)調停期日の決定│調停にかかる時間・頻度
申し立てが受理されると、家庭裁判所により調停期日が指定されます。
1回の調停期日はおおむね2時間程度で、話し合いによる合意の可能性がある限り、何度でも行われます。調停期日が開催される頻度は、1か月に1回程度です。
調停期日では、両親双方出席の下、調停委員が個別にそれぞれの親から主張を聴き取ります。そのうえで、適宜妥協を提案して双方の主張をすり合わせ、調停案への合意を目指します。 -
(3)調停成立│親権者変更の届出
調停案について、両親がいずれも同意した場合には、調停成立となります。
親権者を変更する旨の調停が成立した場合には、調停成立の日から10日以内に、市区町村役場に対して親権者変更の届出を行うことが必要です。
一方、両親間の話し合いがまとまる可能性はないと判断された場合、調停は不成立となります。 -
(4)調停不成立│審判
調停不成立となった場合、親権者変更に関する争いに結論を示すため、家庭裁判所が審判を行います。
前述の親権者変更の際に考慮するポイントを踏まえて、親権者を変更するかどうかを、家庭裁判所が審判によって決定します。この審判で、自分こそが親権者にふさわしいことを、資料などの根拠を用いて主張することになります。
親権者変更(または監護権者変更)に関する審判は、2週間の即時抗告期間を経て確定します。親権者を変更する旨の審判確定後は、調停成立の場合と同様に、審判確定日から10日以内に市区町村役場への届出が必要です。
4、子どもが15歳以上の場合に注意すべき点
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(1)子どもの意見が尊重される
子どもが15歳以上である場合、家庭裁判所が親権者変更に関する審判を行う際には、必ず子どもの意見を聞かなければならないとされています(家事事件手続法第169条第2項、人事訴訟法第32条第4項)。
実際、家庭裁判所が15歳以上の子どもについて親権者変更の可否を判断する際には、子どもの意見を尊重する傾向が見られます。
15歳以上の子どもの親権を獲得したい場合には、日頃から子どもと密接にコミュニケーションをとり、強い絆を形成しておくことが望ましいでしょう。 -
(2)14歳以下の場合よりも養育費が高額になる
親権者を変更する場合、養育費の支払い義務者と権利者が入れ替わるため、養育費について新たに取り決めを行う必要があります。
子どもが15歳に達すると、14歳以下のときに比べて、より生活費がかかってしまうと考えられていますから、支払われるべき養育費の金額も増加することになります。親権を獲得する側としては、裁判所の養育費算定表を参考にしながら、子どもが15歳以上の場合における適正な養育費を請求しましょう。
裁判所では子どもの人数や年齢ごとの養育費の目安となる「養育費・婚姻費用算定表」を公表しています。養育費の請求の際は参考にしましょう。
(参考:養育費・婚姻費用算定表(裁判所))
5、親権変更を弁護士に依頼するメリット
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(1)親権獲得に向けて効果的に主張できる
子どもの親権の獲得を希望する場合には、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
親権者の変更を実現するには、親権者変更調停・審判の手続きにおいて、「自分が親権者として適任である」ことを説得的に訴えるのがポイントです。
弁護士は、依頼者や子どもの状況を踏まえたうえで、調停委員や裁判官に対してどのようなアピールが効果的であるかを検証し、親権の獲得に努めます。 -
(2)調停・審判の準備や対応を一任できる
親権者変更調停・審判に向けては、多くの提出書類を準備しなければならず、手続きへの対応も煩雑です。
弁護士は、調停・審判の準備や期日対応のお手伝いをさせていただくことができます。労力をかけずに、スムーズに親権者変更を実現したいとお考えの方は、ぜひ弁護士にご依頼ください。
6、まとめ
親権者の変更には、親権者変更調停または審判の手続きが必要になります。
特に子どもが15歳以上の場合、親権者の変更に当たっては、子どもの意思が尊重されます。
親権獲得の可能性を高めるためにも、子どもと日頃からきちんとコミュニケーションをとり、関係性を築いておきましょう。
ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスは、離婚に関するご相談に加えて、離婚後の親権・養育費等に関するトラブルの解決も承っております。親権者の変更を申し立てることをご検討中の方は、まずはお気軽に当事務所までご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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