盗撮行為をしたらバレる? 撮影罪で逮捕された時の流れ
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ひそかに他人の裸や下着姿などを撮影する「盗撮」は犯罪です。奈良県内においても、鞄の中にスマホを隠し、女性のスカートの中を撮影した盗撮事件が起きています。
こうした盗撮被害の増加やSNS拡散による二次被害の深刻化により、令和5年7月には、盗撮を規制する「性的姿態撮影等処罰法(略称)」が施行されました。
本コラムでは、性的姿態等撮影罪の概要や罰則、盗撮がなぜバレるのか、その理由や、逮捕された場合の刑事手続きの流れなど、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。


1、盗撮行為で問われる罪
盗撮行為は犯罪ですが、状況によって適用される罪が異なります。
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(1)性的姿態等撮影罪
盗撮事件を起こした場合、「性的姿態撮影等処罰法」の処罰対象となる可能性があります。
・ 性的姿態等撮影罪
正当な理由がなく、ひそかに他人の「性的姿態等」を撮影した場合には、「撮影罪」に問われることになります。この「性的姿態等」とは、性的な部位や身に着けている下着、わいせつな行為や性交等がされている間における人の姿を指します。
罰則は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
・ 性的影像記録提供等罪
盗撮によって撮影・記録された性的姿態等の画像(性的影像記録)を「特定・少数の者」に提供した場合には、性的影像記録提供等罪に問われることになります。
罰則は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
これに対して、性的影像記録を「不特定・多数の者」に提供または公然と陳列した場合には、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に加重されます。
・ 性的影像記録保管罪
提供または公然陳列(不特定または多数の人が認識できるような状態に置くこと)の目的で、性的影像記録を保管した場合には、性的影像記録保管罪に問われます。
罰則は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金です。
・ 性的姿態等影像送信罪
動画投稿やライブストリーミングなどによって、不特定・多数の者に、盗撮された「性的姿態等」の影像を送信した場合には、性的姿態等影像送信罪に問われることになります。罰則は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金です。
・ 性的姿態等影像記録罪
盗撮された「性的姿態等」の影像を、そのようなものであると知りながら、記録した場合には、性的姿態等影像記録罪に問われることになります。
罰則は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。 -
(2)迷惑防止条例の違反
盗撮をした場合は、都道府県が定める「迷惑防止条例」の違反になります。
奈良県にも「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」が定められており、第12条において盗撮行為が禁止されています。
罰則は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金ですが、常習と認められてしまうと1年以下の懲役または100万円以下の罰金に加重されます。 -
(3)住居侵入罪または建造物侵入罪
盗撮しようと近づいてスマホを差し向けたところ周囲の人に見つかってしまったなど、実際に盗撮するには至っていない場合は「盗撮未遂」といえそうですが、迷惑防止条例違反には未遂を罰する規定がありません。
このようなケースでは、盗撮という不法の目的をもって民家や公共施設・商業施設などに立ち入った点について、刑法第130条の住居侵入罪または建造物侵入罪に問われます。
民家のように勝手に出入りできない場所はもちろん、利用者なら自由に出入りできる施設でも不法の目的をもって立ち入れば侵入とみなされて犯罪が成立する可能性があります。
法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
なお、性的姿態撮影等処罰法の撮影罪には未遂犯処罰の規定があるため、撮影未遂罪と建造物等侵入罪の両方に問われる可能性があります。
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2、盗撮がバレる理由
盗撮がバレてしまう理由としては、撮影時の動作やカメラの撮影音などで、相手や周囲の人などに盗撮したことを気づかれてしまうケースが多いでしょう。
しかし、その場で発覚しなかったからといって、その後もバレないわけではありません。
たとえば、防犯カメラが設置されている施設や店舗では、不審な行動をしている人がいないかを事務室で監視していることがあります。盗撮の疑いがある人物としてマークされてしまい、次回以降では盗撮の現場を押さえられてしまうかもしれません。
また、盗撮を疑われると、前後の行動から個人を特定されることもあります。
たとえば「盗撮をする前に、レジで買い物をしていた」という目撃情報があれば、会員登録の情報やクレジットカード情報、スマホの決済情報などから個人が特定されるでしょう。
現代社会では、あらゆるサービスに個人情報がひも付けられているため、思いがけないところから盗撮犯だとバレてしまうことになります。
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3、盗撮がバレた! やってはいけない行動3つ
盗撮がバレると気が動転するかもしれませんが、以下の3つの行動は自分自身を不利な状況に追い込んでしまうためやってはいけません。
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(1)その場から逃げてはいけない
盗撮がバレても、周囲のすきをついて、あるいは相手に攻撃して逃げるといった行動はやめましょう。
犯罪の容疑がかかっているのにその場から逃亡してしまうと、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとして、逮捕される可能性が高くなります。
素直に事情聴取に応じれば逮捕されない可能性もあります。「逃げる」という行動は、みずから逮捕の危険を高める行為だと心得てください。
また、被害者や警備員などに攻撃して逃げてしまうと、暴行罪や傷害罪など、別の罪にも問われることになります。余計に罪が重くなってしまうため、どんなに気が動転しても他人に危害を加えてはいけません。 -
(2)勝手にデータを削除してはいけない
「盗撮の疑いをかけられてもデータを消せばバレない」などと考えてしまうかもしれませんが、その考え方も危険です。
盗撮データの削除は証拠隠滅と判断されてしまいます。逃亡と同じく、証拠隠滅は裁判官が逮捕状を発付する要件になるため、逮捕の可能性が高くなる行為だと心得ておきましょう。
また、データを削除しても警察は復元することができます。 -
(3)素性を隠してはいけない
盗撮がバレてしまい恥ずかしいという感情や、家族などへの連絡を避けたいといった事情から、自分の素性を隠してしまう人も少なくありません。
しかし、どこに住んでいる誰なのかもわからない状況だと、その場から逃げてしまえば行方をつかめなくなってしまうため、やはり逮捕の可能性が高くなります。
関係のない野次馬などにまで素性を明かす必要はありませんが、施設の管理者や警備員、警察官などには身分証を示して素性を明らかにするべきです。
なお、盗撮しておらず、そもそも盗撮の目的はもっていなかったのに「盗撮ではないか?」と疑われてしまった場合でも、やはり素性を隠すべきではありません。身の潔白を証明したいなら、むしろ「逃げも隠れもしない」という姿勢を示すためにも素性を明かしたほうがよいでしょう。
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4、盗撮容疑で逮捕されるとどうなる? 刑事手続きの流れ
盗撮がバレて警察に逮捕されてしまうと、その後はどうなるのでしょうか。刑事手続きの流れを、順を追って解説します。
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(1)逮捕・勾留による身柄拘束を受ける
警察に逮捕されると、その瞬間から身柄拘束が始まります。警察の段階で48時間以内、検察官へと引き継がれてさらに24時間以内の身柄拘束を受けるため、最大で72時間は自宅に帰ることも、会社や学校へ行くこともできません。
ただし、この段階で検察官が「勾留」を請求し、裁判官がこれを許可すると、さらに10日間にわたって身柄拘束が延長されます。
また、10日間で捜査が終わらなければ一度に限って10日間以内の延長が可能です。
勾留期間は10日間+10日間以内=最大20日間となり、逮捕から数えると最大23日間にわたって社会から隔離されてしまいます。 -
(2)検察官が起訴・不起訴を判断する
捜査が終わると、検察官が起訴・不起訴を判断します。起訴とは刑事裁判を提起すること、不起訴とは刑事裁判の提起を見送るという意味です。
起訴は検察官だけに認められている権限なので、刑事裁判で罪を問われるのか、それとも刑事裁判は開かれず刑罰を科せられないまま事件が解決を迎えるのかは、検察官の判断にかかっています。 -
(3)刑事裁判が開かれる
検察官が起訴すると、被疑者の立場は「被告人」に変わり、警察署の留置場から拘置所へと移送されて引き続き勾留されます。
被告人勾留の期限は1か月ですが、刑事裁判が続いている限り延長可能なので、実質的に無制限で身柄拘束が続くことになるでしょう。
刑事裁判では、さまざまな証拠をもとに裁判官が有罪・無罪を判断します。
ただし、むやみに無罪判決を期待してはいけません。検察官は、捜査の結果や証拠を精査したうえで、確実に有罪判決を得られる事件を厳選して起訴しています。
「起訴=有罪」ともいえるほどなので、とくに盗撮をしたのが事実なら無罪判決を得られる可能性は低いといえるでしょう。
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5、盗撮がバレたとき弁護士に相談すべき理由
盗撮をしたことがバレてしまったら、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)素早い釈放が期待できるから
警察に逮捕されてしまうと、起訴・不起訴の判断までに、最大23日間にわたる身柄拘束を受けます。逮捕・勾留に続いて起訴されれば刑事裁判が終わるまで身柄拘束が続くため、事件の行方にかかわらず、その後のスムーズな社会復帰は難しくなるでしょう。
社会生活への影響を抑えるためには早期釈放が欠かせません。弁護士に依頼すれば、逃亡や証拠隠滅を図るおそれはないことの主張を中心に、捜査機関に対して身柄拘束を解除するよう求める弁護活動が期待できます。
逮捕・勾留による身柄拘束は憲法で保障されている人権を大きく制限する強力な手続きであるため、要件を欠いていることを法的な角度から証明すれば、早期釈放を実現できる可能性が高まるでしょう。 -
(2)被害者との示談交渉による解決が期待できるから
盗撮行為には、迷惑防止条例違反や刑法の建造物侵入罪が適用され、厳しく罰せられます。
厳しい刑罰や前科がついてしまう事態を回避するには、検察官による不起訴を目指すのが最も有効です。
検察官が不起訴を判断する際はさまざまな事情が考慮されますが、「被害者との示談が成立しているか?」という点も重視されます。
しかし、盗撮事件の被害者は盗撮犯に対して強い怒りや嫌悪の感情を抱いていることが多いため、示談交渉は容易ではありません。
弁護士に依頼すれば、強い警戒心を抱いている被害者との円滑な示談交渉が期待できます。
安全で実効性が高い示談を期待するなら、経験豊富な弁護士に交渉を一任したほうが賢明でしょう。
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6、まとめ
盗撮を繰り返していると、いずれはバレて警察に検挙されます。自分では「バレずにやっている」と思っていても、すでに被疑者として特定され、捜査が進んでいるかもしれません。
盗撮容疑で逮捕されてしまえば、長期にわたる身柄拘束を受けたうえで厳しい刑罰が科せられるおそれがあります。「バレているのかも?」と不安におびえるのではなく、積極的に解決を図りましょう。
盗撮事件の解決は、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスにお任せください。数多くの刑事事件を解決してきた弁護士が、穏便な解決を目指して全力でサポートします。
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