留置場での生活(食事・一日の流れ)は? 差し入れのNGはある?

2022年05月26日
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留置場での生活(食事・一日の流れ)は? 差し入れのNGはある?

令和4年1月時点で奈良県内には12の警察署が配置されていますが、奈良県内で事件を起こして逮捕された人は原則として事件を担当している警察署の「留置場(留置所)」に収容されます。

刑事ドラマなどでは暗い鉄格子の部屋に閉じ込められるような描写が多いので、家族や親しい人が逮捕されてしまったら「大変な目に遭っているのではないか?」と心配になる方もいるでしょう。

本コラムでは、警察署の留置場に収容されるとどのような生活を送ることになるのか、一日の流れや差し入れの可否などについて、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。

1、留置場での生活|一日の流れや制限される内容

刑事事件の容疑をかけられて逮捕・勾留による身柄拘束を受けると、警察署の留置場に収容されるのが一般的です。
「留置所」と表記されることもありますが、そのような施設・設備は存在せず、正しくは「留置場」といいます。

留置場に収容されると、そこではどのような生活を送ることになるのでしょうか?

  1. (1)留置場では生活の一切を管理される

    留置場では、自由な行動が大きく制限され、生活の一切を管理されます。起床・食事・入浴・就寝までが学校の時間割のように定められており、規則正しい生活を送ることになります。

    留置場に収容された人の生活や行動を管理するのは、警察署のなかの「留置管理課」に所属する警察官です。留置管理課の担当官と取り調べを担当する刑事は、どちらも警察官なので、もしかすると「取り調べで否認や黙秘をしたら留置場でひどいことをされるのではないか?」と心配する方がいるかもしれません。

    実は、警察署における被収容者の処遇については「捜査」と「留置」が厳格に分離されています。事件の捜査を担当する刑事が留置業務にかかわることは一切なく、同様に留置の担当官が捜査に参加することもありません。

    自由な行動は強く制限されるものの、留置場での生活は捜査の経過に関係ないため、捜査の都合で不当な扱いを受けるかもしれないという心配は無用です

  2. (2)留置場の一日

    留置場での生活は、時間によって管理されています。
    都道府県警察や各警察署の運用によって若干の差がありますが、一日の流れはおおむね次のとおりです。

    • 午前7時……起床・洗面・点呼
    • 午前8時……朝食
    • 午後0時……昼食
    • 午後1時……運動
    • 午後6時……夕食
    • 午後9時……就寝


    このように、早朝のうちに起床し、一日に3食を決まった時間に食べて、遅くない時間のうちに就寝するという、理想的な規則正しい生活を送ることになります。

    取り調べなどの捜査は、朝食と昼食の間、昼食と夕食の間におこなわれるのが基本です。
    よほどの事情がない限り、食事の時間を遅らせたり、夜間に取り調べがおこなわれたりすることはありません。

    また、一日のうちに可能な取り調べ時間は原則8時間が上限で、8時間を超える取り調べには警察署長の承認が必要です。刑事ドラマなどに登場するような「食事も取らせない」「深夜・早朝にわたる取り調べ」といった状況は、現実には存在しません

2、留置場ではどのような食事が提供されるのか?

留置場に収容されている間の食事はどのようなものが提供されるのでしょうか?

  1. (1)食事は一日3食

    一日の食事は朝食・昼食・夕食の3食です。食事は、捜査の都合などに関係なく必ず提供されます。事件の現場で実況見分をおこなう、検察官による取り調べのために検察庁へと護送されるといった警察署の庁舎外に出る際でも同じです。

    なお、留置場での食費はすべて警察署の費用で負担されます。あとで「◯日分でいくら」といった請求を受けることはありません。

  2. (2)留置場の食事は「まずい」のか?

    身柄拘束中の食事について、俗に「臭い飯」などと揶揄(やゆ)されることがあります。

    しかし、粗末な食事が提供されているというわけでもありません。留置場で提供される食事は、警察署が契約した外部の惣菜業者・仕出し業者・弁当屋などが作ったものです。食中毒を予防するために揚げ物や焼き物といったおかずがメインになりますが、バランスの取れた食生活を送ることになるでしょう。

    とはいえ、警察署には調理場がないので、食事が提供されるときにはすでに冷めています。
    留置場に収容されている期間、満足できる食事にはありつけないと考えておきましょう。

  3. (3)提供される食事で足りないときは?

    留置場で提供される食事は、基本的な栄養バランスは考慮されているものの、成人、とくに若い男性にとっては「物足りない」と感じる量でしょう。

    もし、提供される食事だけでは足りない場合は、自費で別メニューの食事を購入することも可能です。これを「自弁」といいます。

    警察署によって運用は異なりますが、食事のほかにも、菓子やジュースなどを購入できる場合もあります。このような事情もあるので、留置場での生活にはある程度のお金も必要です。

3、留置場に差し入れできる物・できない物

留置場に収容されている人には「差し入れ」が可能です。
ただし、差し入れできる物、できない物があります。

  1. (1)差し入れできる物

    差し入れできる物は次のとおりです。

    • 衣服
    • メガネ・コンタクトレンズ
    • 手紙
    • 便箋
    • 現金
    など


    ただし、これらの物品でも「すべて可能」というわけではありません。たとえば、衣服でもヒモがついたパーカーやベルトなどは自傷・自殺を防ぐために差し入れ不可とされています

    本や手紙も、同じ理由でホッチキスを使って綴じられたものは受け入れてもらえません。

    一応は差し入れ可能とされているものでも、細かいルールがあり差し入れ不可となるケースはめずらしくないので、事前の確認は必須です。

  2. (2)差し入れできない物

    ここで挙げる物は、差し入れできません。

    • 飲食物
    • タオル
    • シャンプー・ボディソープ・歯磨き粉
    • タバコ
    • ゲーム機
    など


    飲食物は、たとえ保存が可能なものであっても「飲食物を保存する設備がない」という理由で差し入れできません。

    必要であれば、自弁購入することになります。タオルのほか、手ぬぐいなどのように長い布類は、自殺・自傷防止の観点から差し入れ禁止です。シャンプー・ボディソープ・歯磨き粉などは、中身を確認できないため受け入れてもらえません。

    タバコは施設内が全面禁煙なので差し入れ不可です。ゲーム機のほか、電子辞書などの機器類も差し入れできません。

  3. (3)私物を持ち帰ってもらうことも可能

    差し入れだけでなく、被収容者の持ち物を面会に訪れた家族などに持ち帰ってもらうことも可能です。これを「宅下げ」といいます。

    被収容者の持ち物は、留置場に収容される際にすべて預けることになるため、宅下げの希望がある場合は担当官に申し入れる必要があります。

4、留置場への差し入れや接見にお悩みなら弁護士に相談を

留置場への差し入れは、警察署ごとに細かいルールが設けられているため、一応は可能とされているものでもチェックのうえで「差し入れ不可」となってしまうことがあります。
また、家族などとの面会は曜日・時間・回数などの制限があるため、必要なものがあっても「すぐに届ける」というわけにはいきません。

面会を禁止する「接見禁止」が命じられている場合は、被収容者が必要として困っていても、家族が面会の際に差し入れるといった対応さえできなくなります。差し入れや接見についてお悩みなら、弁護士に相談してサポートを依頼しましょう。

  1. (1)すぐに必要な物を差し入れできる

    留置場の被収容者がどのような状況でも自由に会うことができるのは弁護士だけですたとえ接見禁止の命令が下されていても、弁護士との接見は制限されません

    家族による差し入れができない状況でも、弁護士に依頼すれば接見の機会を通じて必要な物の差し入れが可能です。

    特に被収容者が「できるだけ早く差し入れてほしい」と望んでいる場合は、弁護士に依頼してすぐに差し入れてもらうのが最善です。

  2. (2)接見の制限がないので綿密なアドバイスが可能

    家族などの面会には、曜日・時間・1日あたりの回数・同時に面会できる人数などの制限があります。面会できる回数は1日あたり1回です。したがって、他の希望者を含めた回数ですので、すでに他の誰かが面会済みの日は、家族の面会もできません。また、共犯事件など事件によっては接見禁止の制限がついている場合もあります。

    そもそも、家族の方の多くは法律や刑事手続きに詳しくないため、被収容者がこれからどうなってしまうのか、取り調べにどうやって対応していくべきなのかといったアドバイスを提供するのは難しいでしょう。

    弁護士の接見には、このような制限が設けられていません。いつでも差し入れ可能というだけでなく、容疑をかけられて刑事手続きに不安を感じている被収容者に対して綿密なアドバイスを提供することが可能です。

    取り調べに対する不安や、留置生活における不当な処遇など、疑問に感じる点を解消するには弁護士への相談をいかしましょう

5、まとめ

刑事事件の容疑をかけられて身柄を拘束されると、警察署の留置場に収容されます。不自由な生活を強いられるものの、規則正しく、食事や睡眠などは保障されているため「ひどい目にあっているのではないか?」といった心配は要らないでしょう。

とはいえ、捜査の対象として身柄拘束を受けている立場であることは確実です。厳しい取り調べを受けていたり、留置担当官から不当な処遇を受けたりするおそれもあるため、弁護士のサポートは欠かせません。

残されたご家族の方にできるのは、できる限りの面会や差し入れでサポートを尽くしたうえで、弁護士に相談して弁護活動を依頼することです。大切なご家族が逮捕されて留置場に収容されてしまった場合は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 奈良オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています