落下物による事故の責任は誰にある? 慰謝料や損害賠償金の交渉法
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奈良県警察が公表している交通事故の統計資料によると、令和5年に奈良県内で発生した交通事故死者数は26人で前年よりも3人減少しました。また、交通事故重傷者数は374人で、前年よりも3人増加しています。
交通事故というと車対車または車対人の事故を想像する方が多いのではないでしょうか。しかし、交通事故の中には、落下物が原因となって発生する事故も存在しています。このような落下物による事故が発生した場合には、誰がどのような責任を負うことになるのでしょうか。
今回は、落下物による事故の責任や過失割合、慰謝料・損害賠償金の交渉方法について、ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの弁護士が解説します。
1、落下物の責任は誰にあるのか
落下物により事故が発生した場合、誰が責任を負うのでしょうか。以下では、落下物による事故の責任の所在について説明します。
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(1)責任は積み荷を落とした方
前方を走っている車や対向車などから積み荷が落ちてくると、積み荷との接触や積み荷を避けようとしたことが原因で事故が生じることがあります。このような事故が発生した場合には、積み荷を落とした運転手に対して、事故の責任を追及することができます。
道路交通法では、積み荷を載せて走行する場合には、積み荷が崩れ落ちないように固定するなど必要な措置をとることが義務付けられています(道路交通法71条4号)。また、積み荷が転落した場合には、そのまま放置するのではなく、速やかに落下物を除去するなどの措置が義務付けられています(道路交通法71条4号の2)。
道路上の落下物による事故では、上記のような積み荷を落とした運転手の義務違反がありますので、一般的な接触事故と同様に損害賠償請求が可能です。 -
(2)落とし主がわからない場合はどうするのか
落下物による事故の場合、積み荷を落とした運転手が気付かずにその場を立ち去ってしまったり、積み荷が落下してから時間がたっていたりして、落下物の落とし主がわからないということもあります。このような場合には誰に責任追及をすればよいのでしょうか。
落下物を落とした相手がわからない場合でも、責任を負わなければならないのは積み荷を落とした運転手であることは変わりません。まずは、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像、落下物の種類・内容・記載事項を確認し、警察に事故の届け出をするのが大切です。
それでも、落とした人物が判明しない場合には、ご自身の任意保険の「人身傷害保険」や「車両保険」などを利用して補償を受けられる可能性がありますので、任意保険会社に確認をしてみるとよいでしょう。 -
(3)交通事故となったときは相手方の保険会社と交渉する
落下物の落とし主が特定でき、落とし主が任意保険に加入している場合には、事故による慰謝料や賠償金などの交渉は、相手方の保険会社との話し合いにより進めていきます。
落下物による事故により怪我をしている場合には、示談交渉は、怪我が完治または症状固定(治療しても改善が期待できなくなった状態)した段階からスタートとなりますので、まずは怪我の治療に専念するようにしましょう。
2、一般道と高速で違う? 落下物を原因とした事故の過失割合
落下物により事故が発生した場合、加害者と被害者の過失割合はどのようになるのでしょうか。
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(1)高速道路での事故の場合
高速道路上では、一般道で適用される道路交通法上の義務に加えて、積載物の転落による事故を防止するために貨物の積載状態を点検する義務(道路交通法75条の10)が課されています。そのため、積み荷を落下させた先行車の責任は、一般道よりも重くなっています。
高速道路上で落下物による事故が発生した場合の基本の過失割合は、
先行車:後続車=60:40
となります。
また、以下のような要素があった場合には、基本の過失割合が修正されることになります。- 視認不良:後続車の過失割合を10%減算
- 追越車線:後続車の過失割合を10%減算
- 後続車が自動二輪車:後続車の過失割合を10%減算
- 後続車の速度違反:後続車の過失割合を10~20%加算
なお、高速道路上では、後続車が落下物に接触しなかったとしても、落下物の回避措置により事故が発生することがあります。このような非接触型の事故に関しても、上記の過失割合が適用されます。
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(2)一般道での事故の場合
一般道では、高速道路のような高速度での走行は許容されていませんので、落下物があった場合は、落下物の発見および回避が容易です。むしろ、落下物を回避できずに事故が生じた場合には、後続車両の前方不注意や速度超過、車間距離などが問題になるケースも多いといえます。
そのため、一般道での落下物による事故では、高速道路上での事故に比べて、後続車両の過失割合が高くなる傾向があります。
もっとも、一般道での落下物による事故の場合、個別の事故状況に応じて具体的な過失割合が異なっていますので、定型的な判断ではなく、個別具体的に判断する必要があります。そのため、一般道で落下物による事故に巻き込まれてしまったときは、交通事故トラブルの実績がある弁護士に過失割合を判断してもらうとよいでしょう。
3、弁護士に対応を依頼するメリット
落下物により事故が発生した場合には、弁護士に対応を依頼するのがおすすめです。
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(1)適切な過失割合を判断してもらえる
落下物により事故が発生した場合、被害者側にも過失が生じるケースも珍しくありません。
「落下物に巻き込まれたのに、納得できない」と考える方も多いと思いますが、事故状況から見て、回避可能なケースであれば、一定の過失割合が生じます。
もっとも、具体的な事故状況次第では、適切な修正要素を主張立証することにより、被害者側の過失割合を低く抑えることが可能です。そのためには、交通事故トラブルの解決実績がある弁護士のサポートが必要になります。保険会社から提示された過失割合に納得できないときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。 -
(2)保険会社との交渉を任せることができる
交通事故の示談交渉は、被害者と保険会社の担当者との間で進めていくことになりますが、知識や経験の乏しい被害者個人では、保険会社の担当者を相手に適切に交渉を進めていくのは困難です。また、事故の治療に加えて、仕事や家事で忙しい状況で示談交渉もしなければならないというのは大きな負担といえます。
そのため、保険会社との示談交渉に不安やストレスを抱える方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。弁護士に依頼をすれば、保険会社との交渉をすべて任せることができますので、示談交渉によるストレスも大幅に軽減され、適切な条件で示談が成立する可能性も高まります。 -
(3)慰謝料を増額できる可能性が高くなる
交通事故の慰謝料には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)という3つの基準が存在しています。
被害者にとってもっとも有利な基準は、「裁判所基準」になりますが、裁判所基準を利用して示談交渉を行うことができるのは、弁護士に限られます。
ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスでは交通事故トラブルの解決実績がある弁護士が在籍しています。少しでも慰謝料額を増額したい場合は、まずはお気軽にご相談ください。
4、交通事故被害者が請求できる慰謝料や損害賠償
交通事故の被害者が請求できる賠償金には、以下のものがあります。
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(1)治療費
怪我が完治または症状固定と診断されるまでの治療費を請求することができます。加害者が任意保険に加入している場合には、病院での治療費は、加害者の保険会社から病院に直接支払われますので、被害者自身が負担することはありません。
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(2)通院交通費
病院への通院に公共交通機関や自家用車を利用した場合には、実費相当額を請求することができます。タクシーを利用した場合には、タクシーを利用する必要性と相当性が認められる場合に限り請求することができます。
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(3)休業損害
交通事故による怪我が原因で仕事を休むことになったときは、減収分を休業損害として請求することができます。休業損害は、会社員や自営業者だけでなく、専業主婦についても賃金センサス(政府が公表している賃金状況の資料)を基準にすることで休業損害を請求することができます。
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(4)慰謝料
交通事故によって生じた肉体的・精神的苦痛に関しては、慰謝料を請求することができます。慰謝料には、主に以下の3つの種類があります。
① 傷害慰謝料(入通院慰謝料)
傷害慰謝料は、交通事故による怪我が原因で治療を受けることになった場合に、怪我の程度などに応じて支払われる慰謝料です。傷害慰謝料は、「入通院慰謝料」とも呼ばれ、入通院期間や日数に応じて計算するのが一般的です。
② 後遺障害慰謝料
症状固定後に後遺障害が生じたときは、後遺障害の内容および程度に応じて後遺障害慰謝料を請求することができます。後遺傷害慰謝料は、後遺障害等級認定の手続きによって認定された後遺障害等級を基準にして支払われます。
③ 死亡慰謝料
交通事故で被害者が死亡した場合には、死亡慰謝料が支払われます。被害者は、事故によって亡くなっていますので、死亡慰謝料は、被害者の相続人が代わりに請求することになります。 -
(5)逸失利益
交通事故により後遺障害が生じると、労働能力が制限され、将来の収入が減少することになります。このような将来の減収分については、逸失利益として請求することができます。
逸失利益には、以下の2つの種類があります。① 後遺障害逸失利益
後遺障害が生じた場合の逸失利益は、以下のような計算式により計算をします。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
② 死亡逸失利益
被害者が死亡した場合の逸失利益は、以下のような計算式により計算をします。
基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数
※ライプニッツ係数とは:損害金を一括で受け取る際、将来にわたって得られたであろう利益を算出するために用いられる数値
5、まとめ
道路上の落下物に衝突または落下物を避けようとして事故が起きた場合には、積み荷などを落下させた運転者に対して、責任追及が可能です。ただし、落下物による事故の場合、加害者を特定するのが難しいケースもありますので、まずは、警察に事故の届け出を出すことが大切です。
加害者を特定できた場合には、加害者に対して損害賠償請求をすることになりますが、その際には弁護士のサポートが必要になります。まずはベリーベスト法律事務所 奈良オフィスまでお問い合わせください。交通事故問題の解決実績がある弁護士が解決に向けて尽力いたします。
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